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2004年の創業以来、店頭・売場を起点としたフィールドマーケティング事業を中心に展開してきた「インパクトホールディングス(以下、インパクトHD)」。
海外と比べ店頭での販売傾向が根強い日本において、実際の販売現場でのフィールドマーケティングの実績とノウハウを強みとし「販促DX事業」・「インフラDX事業」を展開してきた。
さらに現場で積み上げたデータや知見を活かしながら、日本のカルチャーの中心であるアニメやマンガなどのIPコンテンツを活用したプロモーションを企画する「エンタメ事業」にも力を入れ、大きく事業を拡大している最中である。
新しく定めたミッションやビジョンに込められた想いやこれからの会社の姿について、2024年に代表取締役社長へ就任した寒河江清人さんにお話を伺いました。
〈プロフィール〉
なぜミッション・ビジョン・バリューを改める必要があったのか。
―――2025年にミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を刷新した理由を教えてください。
寒河江さん(以下敬称略)
まず2023年にMBO(マネジメント・バイアウト)を行い、上場廃止後、創業者である福井康夫氏が退任することが決まり、2024年に私がグループ代表に就任することが決まりました。
創業20周年を迎え、第二創業期に入り、物事を刷新するには良いタイミングということで、今一度上層部で集まり会社の方向性をどうしていくのかを話す中でMVVを刷新しようかと。
これまでは「売場を元気に、日本を元気に、そして世界を元気に!」という事業コンセプトを掲げていました。
ただインパクトHD自体、数多くの事業会社から成り立っていることから「色々事業を手掛けているけど具体的にはどういう会社なの?」とお取引先や投資家の方々から言われることもあり、まずは事業セグメントを整理して明確にしました。
昨今の事業環境や将来的なインパクトHDの事業領域を考えた時に「売場だけの話ではないよね」と。
確かにこれまでは国内のフィールドマーケティング事業を強みとしてきましたが、これからはIPコンテンツを活用したエンタメ事業や、それらを足掛かりにした海外展開を含めた事業領域として再定義した形です。
そこでミッションとして定めた言葉が「Wow Shopping!」でした。
Wow Shopping!
それは、デジタル×アナログの融合で、人の心を動かすプロモーションを提供すること
Wow Shopping!
それは、人×情報の繋がりをデザインし、付加価値創造のエンジンとなるインフラを提供すること
Wow Shopping!
それは、新しい視点×表現で、人に没入感溢れるエンターテインメント体験を提供すること
一つ目は創業から続けてきたデータに基づいたフィールドマーケティングサービスを手掛ける「販促DX事業」、二つ目がデジタルサイネージや飲食店向けセルフオーダーシステムなどのIoT・DXソリューションを推進する「インフラDX事業」。
3つ目がアニメやマンガなどのキャラクターコンテンツを活用したプロモーション企画・グッズ販売を手掛ける「エンタメ事業」の3つの事業セグメントに再整理し、それぞれの事業セグメントを表す形でミッションを定義しました。
「購買行動」そのものをエンタメに。
―――これからのインパクトHDが活動する姿自体をミッションとして定義した訳ですね。その中で「Wow Shopping!」という言葉自体にはどのような意味が込められているのでしょうか。
今までは売場の販促を起点に事業拡大していくという意味合いが強く込められていましたが、これからは「購買行動」そのものをエンターテイメントとして盛り上げていきたいと願いを込めています。
買い物ってものすごいパワーがあると思っています。
週末に商業施設を練り歩きながら「この服良いなぁ」「このバッグすごいなぁ」と見るだけでも楽しい。子どもはプレイランドで遊ぶことができて、フードコートでご飯を食べて帰る。性質は違ってもディズニーランドやUSJなどのテーマパークで遊ぶのと同じくらい楽しむことができるポテンシャルを持っています。
そう考えた時に私たちの使命はやはり買い物自体を盛り上げることだろうと。
とはいえ、実は日本は海外と比較してもリアル店舗での購買比率がいまだに高い国です。
世界各国でのEC購買率を見てもアメリカや中国はすでに50%以上を占めているなかで、日本は全体の10%ちょっとに留まります。ある商圏において小売店などの店舗が、需要を超えて出店している状態「オーバーストア」であると言われながらも、毎年1,000店舗以上が増え続けています。
例えば、ブランドが刷新されるタイミングなどでは誰もが店頭に足を運んでいると思います。
その場で買うかどうかは別としても、新商品の発売やブランドスイッチのタイミングでリアル店舗は購買行動の重要なタッチポイントの一つであり続けています。
東京のような大都市圏であれば、一歩家を出れば右を見ればドラッグストアがあり、左を見ればコンビニがある…ECで注文して待つよりリアル店舗で商品を買った方が早いですよね。
そんな状況ですから、日本に軸足を置いてフィールドマーケティング事業を展開するとなれば、リアル店舗における販促市場は会社を拡大していく上でまだまだ重要な一大市場です。
一方で海外進出を考えるとなるとそれ一本槍では難しくなってくる。そこでエンタメ事業のような新たな工夫や挑戦が必要になってくる訳ですね。
自ら考えること。変革のための挑戦。
―――改めてMVVを策定したことで社員の方々にはどのような変化を期待しているのでしょうか。
どこの企業でも同じことが言えますが、一般的には創業者は強烈なリーダーシップとカリスマ性で会社を引っ張っていくことが多いです。
その反面、会社の体質としてどうしてもトップダウンになってしまう。今までも高い目標を掲げて目標をクリアしてきましたが、そのためのアイデアの多くが創業者からのトップダウンの指示になってしまう一面はインパクトHDにもありました。
私がグループ代表になる時にはそんな経営の仕方を止めようと自分に誓っていました。
もちろん意見やアイデアは出しますが、それに対して相互にフィードバックがあるような関係を築こうと。
2027年までのビジョンとして掲げる「EBITDA 64億円達成」という目標は、実質現状の利益を倍にするという意味なので挑戦的な高い目標を設定しています。
またバリューに関しても、今までは「インパクトホールディングスウェイ」という法令遵守といった人間性について語るものがありましたが、今回はビジネスパーソンとしての素養について触れるものへと変更しました。
TEAM IMPACT
Impossible? “I’′m possible!”
不可能などない。アイデアと工夫で可能にする。
Drive yourself.
待っていてはダメだ。自ら行動する。
Fail fast, fail forward.
失敗を恐れるな。変化しながら挑戦する。
どちらも現状維持では達成できるものではなく、これからは社員全員が「自分の頭で考えて挑戦する」ことが必要になります。
現状維持というバイアスがかかったマネジメントは良い結果を生み出しません。
最初からダメと決めつけずにチャレンジすること。100%前例を踏襲しないこと。
何か少しでも変化を加えたり、または全く別のやり方で挑戦したり…失敗しても良いから自ら方針を考えて、実行していくスタイルを求めていきます。
私自身も入社後に色々な試行錯誤を重ね何回も失敗してきました。
ユニクロの柳井正さんは「一勝九敗」という著書を出されていますが、私なんて「一勝三百敗」くらいで。でもそれで良いんですよ。
MVVは改変しましたが、会社全体として全く新しいことを言っている訳ではなく、今までの慣習や変化してきたことを整理して伝え直しているだけです。これまでも高い目標に対してクリアできる実力を持ったメンバーであれば違和感なく受け取ってくれると思っています。
既存の組織体制も再編を検討しながら、より明確に各々が個性と実力を発揮して挑戦できるような組織作りも進めていきます。
若い力を中心に変革を起こしていく。
──会社として変化へ挑戦するなか、新卒で入社してくるメンバーに求めるものは何でしょうか。
正直に言えば、スキルや技術の面で新卒で入社してくるメンバーのレベル感では大差はないと思っています。
なので、人間性として向上心とともに協調性やチームワークを大切にする姿勢があることは大前提ですね。
私たちのような仕事はメンバーと一緒に仕事に取り組めなければ大きな成果を出すことは出来ません。
そして、会社全体としても若返りを求めています。これまでは新卒として年に10名ほどの採用を続けてきましたが、2025年は30名ほどの入社が決まっていて、2026年にはさらに倍の50名の採用を予定しています。
私たちの仕事内容としては、新卒入社のメンバーでも1年間一生懸命仕事に取り組んでいれば、リーダーやマネージャークラスに十分なれると思います。
本当に一生懸命頑張ったメンバーを引き上げて、若手が輝く活性化した組織作りを目指していきたいです。
また海外展開の足掛かりとして重要となるエンタメ事業においても、やはり若い世代のメンバーが当事者としての意識が高い訳です。
実際にIPコンテンツを持つお取引先や企画を提案させていただくお取引先と会話をしていても若い社員が多くいることを「とても良いですね」と評価してもらえる機会も増えました。
販促・マーケティングの知見を持つベテラン営業マンやプランナー、エンジニアの方々とともに、どんなアニメやマンガのキャラクターが流行っているのか、どんなコンテンツなら流行るのかを肌感で知っているメンバーが積極的に企画を考えてもらいたいと思っています。
日本のコンテンツ産業を引っ張っていく気概を持ってくれると嬉しいですね。
―――最後に学生さんへ伝えたいことはありますか。
お伝えしているように私たちは購買行動自体をエンターテイメントにしたいという想いを掲げています。
なので、みなさんにも普段の「買い物」について改めて考えてみてほしいと思います。
「なぜ自分はこの商品を手に取ったのか」「どの商品と比較してどこが良いと思ったのか」「なぜこのようなレイアウト・陳列なのか」「このPOPはどんな意味があるのか」…自分自身の購買行動をエンターテイメントという観点で見直すだけでも、インパクトHDの事業への理解も深まる上に、その面白さに気づいてもらえると思います。
―――本日はありがとうございました。
ありがとうございました。






