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人材領域とエネルギー領域を中心にWEBマーケティング×セールスの融合により、成約支援事業を展開している『ポート株式会社(以下略、ポート)』。
ソーシャルメディアを利用した人材採用支援サービスから始まり、蓄積したマーケティングノウハウを活かし、さまざまな領域でのサービス開発を手掛けてきました。
2022年12月に「社会的負債を、次世代の可能性に。」というパーパスへ変更し、新たなステージへと踏み出したポート。
何を目指し、なぜ「社会的負債」という概念を生み出したのか。
ポートが目指す方針に変化が訪れるまでを肌で体感してきた採用担当者の方へお話を伺いました。
〈プロフィール〉
パーパスを定めるに至った経緯とは?
―――パーパスを新たに策定した経緯について教えてください。
北原さん(以下敬称略)
2022年の初秋にいくつかの契機が重なり、ミッション型の経営からパーパス経営※へアップデートする動きがスタートしました。
※パーパス経営とは
企業が単なる利益追求だけでなく、「自社の存在意義(パーパス)」を明確にし、それを軸に経営を行うアプローチを指します。この考え方は、企業が持続可能性や社会的な影響力を重視し、長期的な価値創造を目指すためのものです。
当社がパーパスへアップデートした理由は、大きく3つです。
ひとつめは、企業を取り巻く環境の変化と、社会や投資家からの期待の変化に起因しています。
上場企業は利益の追求にとどまらず、社会的な意義を示し、ステークホルダーとの関係を重視するこのアプローチを重視すべきであると捉えています。
ポートも2018年に東証グロース市場へ(当時、東証マザース市場)上場し、パーパス経営を実現するべきであると使命感を抱きました。
ふたつめは、2022年12月に現在の本社オフィスへの移転が決まっていたことです。
企業理念・行動指針のような重要な経営方針をアップデートし、伝えるにはベストなタイミングでした。
最後に、最も大きな理由として、当時掲げていた「ミッション」に対する課題感です。
2015年に『ポート株式会社』という社名に変更した際、「世界中に、アタリマエとシアワセを。」というミッションを掲げました。
社会課題に向き合っていくという当社の考え方を表していたミッションではありましたが、事業の拡大や流れの中で、メッセージの表現方法や社内での浸透性に課題を感じていました。
この3つが重なり、改めて私たちの存在意義を今一度見直そうという流れになりました。
―――北原さんが「世界中に、アタリマエとシアワセを。」というミッションに感じていた課題感はありましたか、それは具体的にどんなものでしたか?
提供している価値を最大化させたとして、ミッションの実現に向けて進歩しているのかという疑問が当時の私にはありました。
つまり多くの人が取り組んでも解決されていないからこそ社会課題と呼ばれており、自分たちが行っていることは果たしてその解決に近づけることができているのかと感じていました。
また、日本での「持続可能な開発目標(SDGs)」の採用や、経済産業省による「未来の企業ガイドライン」などの背景を踏まえ、「我々自身のあるべき姿や存在価値」(ミッション)から、「社会的価値やステークホルダーまで考慮した存在価値」(パーパス)をより重視するべきではないか、という考え方を意識するようになりました。
“社会的負債”という言葉に込められた想い。
―――「社会的負債を、次世代の可能性に。」という言葉に決まった経緯について教えてください。
負債とは、もともと企業会計用語で「将来的にほかの経済主体に対して、金銭などの経済的資源を引き渡す業務」のことです。
しかし、一般社会においてはさまざまなな原因によって経済的な負債だけではなく、物事においても負債をため続けている状態だと、私たちは認識しています。
そして、その負債が積み上がった結果、社会問題を起こし、社会課題化している、と考えています。
ポートが取り組むべきテーマは、すでに社会課題化されたものではなく「社会が抱えている負債」すべてである、と定義しました。
自ら社会の問題点を根本から定義し、問題提起し、解決施策を導き出し、丁寧に確実に行動に移し、解決することを約束するためにも、「社会的負債」という表現に至りました。
社会的負債を一つずつ取り除いていかなければ根本から解決することはできないと考えています。
だからこそ効率や収支が悪いせいで、人々が目を背けているような負債も、それこそポートが危機感を持って取り組むべきであるという強い想いが込められています。
複雑であり、難度が高いからこそ挑戦していくべきであり、私たちがやるべき使命であると誰もが本気で感じています。
明確になった、自分たちが目指すもの。
──パーパスが社内で公表された後、どのような変化がありましたか?
事業そのものに大きな変化があった訳ではありませんが、パーパスが作られたことによって、自分たちの事業では何を目指してやっていくのかが明確になり、より強く実感できるようになりました。
人材やエネルギーなど領域を超えて事業を運営しているため、それぞれのマーケットで抱えている社会的負債が異なります。
そこでポートでは「One-Purpose Multi-Vision(ワンパーパス マルチビジョン)」を採択しています。
領域ごとにパーパスを実現するためのビジョンが策定され、そのビジョンを実現するために、各事業が価値観やソリューションを生み出し、そして、一人ひとりの日々の業務内容に落とし込まれています。
例えば、就職活動の領域では「情報の非対称性」や「3年3割」という社会課題が挙げられます。
・情報の非対称性:就職活動の現場においては、企業は毎年採用活動を行うなかでノウハウや知識がストックされる一方、就活生は基本的には単年で活動を行うため情報量に格差が生まれた状態のこと。
・3年3割:新卒入社の約30%が3年以内に離職しているデータを表す言葉。
そういった問題に対して、例えば事業としては下記のようなことに取り組んでいます。
・ノウハウ/口コミサイト運営:私たちが就活生に向けてノウハウや口コミを無償で提供。就活生同士の情報格差を減らすことや、企業と就活生とのノウハウの差分を埋めることが可能ではないか。
・エージェントサービス:就活軸の検討から企業探し、選考サポートまで行う。意思決定をアドバイザーが寄り添い、社会で活躍することを前提とした就職支援を行うことで離職率を下げることが可能ではないか。
もちろんこれだけで解決できる訳ではありませんが、解決方法のひとつになり得ると考えています。
【パーパス→各事業領域でのビジョンと課題意識→ソリューション】のような流れでストーリーが設計されているため、実際に一人ひとりが取り組んでいる日々の業務が最終的に何を目指しているのか実感できるようになりました。
―――会社の方針として、変化が生まれた部分はありますか?
大前提にはなりますが、ポート上場企業であるため、収益向上、そして企業価値向上が求められます。
しかし、利益だけを考えると短期的には歓迎されなくとも、パーパスがあるからこそ果たすべき使命が生まれ、ポートが取るべきアクションしようという意思が生まれたと思います。
一例として、過去には宮崎県日南市に初めてのIT企業としてサテライトオフィスを展開したり、直近では自閉症を持つアーティストの方の支援をはじめ、石川県金沢市に卓球チームの設立、八ヶ岳の農業大学校再建など、地方活性化にも取り組んでいます。
私たちは次世代の可能性という言葉を掲げていますが、これは本当に100年以上という単位でより良い社会を目指す意思でもあり、そこにゴールはないと思っています。
1年間で社会的負債の量が減っていれば、それは私たちにとって成長だと思います。
そして、どこまで負債を減らしますか、と問われたらゼロになるまでと答えるしかありません。
ただ、そんな社会が訪れる可能性は低いと思っています。なぜなら一つの社会的負債を解決すれば、また別の社会的負債が生まれてくるからです。
だからこそ、社会的負債に向き合い続ける企業でなくてはならないし、私たち自身も社会的負債に向き合っていると強く自覚しなければいけません。
企業としてもこのスタンスを持続可能なものとして引き継いで行く必要があるし、それがまさにパーパス経営だと感じています。
“私の未来”のために、本気で。
──就職活動中の学生にパーパスから感じ取ってほしいことは何でしょうか。
ここまでの説明でも伝わると思いますが、ポートが社会的負債の解決に真摯に向き合っている会社であるということ。
そしてその本気度合いを感じてほしいと思っています。
そして「次世代」という言葉は、みなさん、さらに言えばみなさんの子どもたちが、生きる未来でもあるということを理解してほしいと願います。
社会課題を解決する、と言葉にするのは簡単ですが、実行レベルとなるとかなり困難なものです。
よく当社では「複雑性が高い」と表現しますが、さまざまな要因が絡み合っている問題ばかりですから。
社会から後回しにされがちなものこそ、私たちが絶対にやらなきゃいけないという使命感を持っている。それを本気で抱いていることが伝われば嬉しいです。
──最後に、強い想いを抱くポート株式会社の中で活躍されている方はどんな人でしょうか。
「ポート 5Values」という私たちが大切にする価値観と行動指針を体系化したものがあります。
これはパーパスを実現するために、一人ひとりが会社に期待される動きでもあり、そしてポートの文化でもあります。
ポート 5Values
01 アンインストール
年数や経験を重ねていく過程で、失いがちなものは素直さ。マーケットは常に変化し、やるべきことも期待される役割も変わる。だからこそ、初心のスタンスが価値になる。過去の蓄積に頼るのではなく、プライドや経験をアンインストールし続ける。素直さを失わず、学びを続けよう。
02 パートナー思考
誠実さがなければ、大きな成果は生み出せない。ユーザー、お客様、一緒に働く仲間、そして、すべての人に対する誠実な姿勢、社会に対する当事者意識が、共感を生み、共創を生み、成果を生む。私たちは決して驕ることなく、また偽ることなく、真摯に物事を成し遂げていこう。
03 高い解像度
難解で複雑な課題を解くには、広く深く因数分解する力が欠かせない。①仮説を立てる。②全体を構造化する。③定量的データ分析や定性的調査、ヒアリングを徹底。④インサイトを正確に掴む。⑤正しい解決策を導き出す。この解像度の高いプロセスと現場力で、意思決定の精度を高めていこう。
04 ディテールコミット
言ったことを、やり切る。期待を超え、驚きを与える。圧倒的なエグゼキューション力こそが、私たちの強みであり、他を凌駕する結果を可能にする。さらに、自分なりのクオリティを1%以上プラスし、付加価値を発揮する。小さな信頼を積み重ね、成長を加速させていこう。
05 挑戦のアタリマエ化
一人ひとりの挑戦の総量が、個人や組織の成長の源泉となる。リスクは飛躍のチャンス。挑戦へのハードルを下げ、互いに励まし、手を挙げる数を増やそう。失敗にはリスペクトを。ただし、事後検証は徹底的に。挑戦は特別なものではなくアタリマエ。そんなカルチャーをみんなでつくっていこう。
また、年間表彰などもこの5つの項目に沿って部門として表彰されており、活躍している人たちはこの5つの項目を根本とし、日々の業務に取り組めています。
この行動指針を高いレベルで体現していくことが、各事業のビジョン、そしてパーパスの達成に向けて、重要となります。
―――本日はありがとうございました。
ありがとうございました。