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東京都港区に本社を構え、海外6カ国・地域に支社を展開する総合広告代理店「CIRCUS」。興味をひかれる社名には、街から街へと移動するサーカス小屋で繰り広げられる華麗な曲芸を披露するかのように、世界中を「一本のロープ」で結んでいくという思いが込められているのだそう。
今回は、河野広一社長と、代表社員1名にインタビュー。事業の特徴や実際の仕事の内容、求める人材像や採用担当者の視点を伺いました。
河野 広一(こうの・ひろかず)
株式会社CIRCUS 代表取締役
早稲田大学卒業後。ADKにて4年間のテレビ局を担当、8年間の新規開拓に特化した
営業を経て2004年に株式会社CIRCUSを設立。
株式会社CIRCUSとは
株式会社CIRCUSは、従来の広告業とは異なりプロジェクト全体を一貫してサポートする「トータルプロデュース」を実践している完全独立系総合広告代理店。「こんなことがあったらいいな」「あんなことがあったら楽しいな」という自由な発想から企画を立案していくのが特徴。そのビジネスは国内だけでなく世界へも広がり、日々世界を相手に挑戦し続けている。
【社長インタビュー】
「大手の下請けには絶対にならない」
——貴社の事業内容について教えてください。
河野社長 弊社は完全独立型総合広告代理店です。同じ業態の企業には、有名な電通さんや博報堂さん、私が以前務めていたADKホールディングス(旧・アサツー ディ・ケイ)さんなどがあります。
CIRCUSは企業のコンセプトとして、「Big picture」「Total produce」「Full Commit」を掲げています。これは文字通り、世の中にありそうでなかった、実現可能な「ビックピクチャー」を描き、「トータルプロデュ―ス」で企業の手を取り伴走し、「フルコミット」で最高に美しい着地まで到達させることを表しています。
常にCIRCUS側から自主的にプレゼンテーションを仕掛けるという、提案型のビジネスを主体として広告提案を行ってきました。
——今年で17年目になりますが、創業当時はどのような思いで起業したのでしょうか。
河野社長 2004年にたった一人で創業したのですが、当時、2つのことを決めました。
まず一つは、大手の下請けにならないことです。
日本には星の数ほどの広告代理店がありますが、実は小さな企業には、先ほど挙げた電通さんや博報堂さんといった大手企業の、下請けとしてビジネスを回しているという形が多いのです。
そのような業界構造の中で私は、小さくても輝きを持っている広告代理店にしたいと思い、「大手の下には絶対につかない」と決めたのです。
つまり、われわれは大手の「下」で仕事をするのではなく、ライバルとして「横」に位置する存在です。ある意味で競合企業とも言えるでしょう。
「部署も役職も設けない」完全プロジェクト型ビジネスモデル
河野社長 私が最初に決めたことのもう一つは、「部署や役職で人を分業化しない」ことです。
多くの広告代理店においては、クリエイティブ、マーケティング、プロモーション、テレビCMなど、部署によって扱う分野が異なり、かなり分業化されているんです。
しかし、提供可能なサービスは多様にあるというのに「担当部署以外のことはわからない」と言っていては、広告代理店の最大価値は発揮できません。
その考えから弊社には「部署」という概念はありません。完全に「プロジェクト」ベースで必要な専門領域を持った人でチームを作り、組織を構成しています。
これにより、CMのみ、グラフィックのみといった機能ベースの提案ではなく、弊社が提案できるすべてのサービスを網羅した「トータルプロデュース」を行うことを可能にしているのです。
さらに、弊社には「役職」も存在しません。経営の責任を背負っているという意味で、私や海外支社の代表には「代表取締役」といった肩書きがありますが、それ以外の社員に関してはプロジェクトリーダーといった「役割分担」のみで、上下を示すような「肩書き」は一切、設けていません。
プロジェクトベースでビジネスを回すには、部署も役職もないフラットな人間集団の方が、組織の総力を圧倒的に発揮できると考えたからです。
これからの時代は、サービス単体ではなく、プロジェクト全体を考える「プロジェクトクリエイティブ」の概念が必ずや求められる。そう考えて16年前に立ち上げたのがCIRCUSです。
広告は国境で切れない
——海外6カ国・地域に拠点を持っていますが、世界においてはどのような強みを持っていますか。
河野社長 弊社が持つ7カ国・地域(東京、ニューヨーク、ロンドン、上海、香港、ソウル、台北)の拠点を活かし、「ワンチーム」でのトータルプロデュースが可能なことは、大きな強みの一つです。
たとえば、大企業だと海外に広く事業展開している会社はたくさんありますが、国内と海外を包括したグローバルサポートできている広告代理店はほとんどありません。
しかし我々は、世界に持つグローバルネットワークと、先ほど紹介した、部署を持たないプロジェクトクリエイティブな組織構造によって、企業の商品の世界展開を、国内だけでなく海外も含めて、トータルプロデュースしています。
それも企画からプロモーションの提案だけでなく、販売まで担っています。ここまでサポートできるのは大手でも、そうありません。
広告は国境で切れません。これからの広告は、クライアントに最適化したサービスを世界各地で同時並行的に提供できなければならないのです。
現代は「一億総広告代理店」
——貴社は世界に裾野を広げていますが、広告業界全体としては今どのような課題感がありますか。
河野社長 SNSで誰でも情報を発信できる現代は、広告代理店がどのような役割を果たすか、という根本問題に突き当たっています。
一つ例を挙げると、我々は株式会社MTGの「SIXPAD」というブランドの広告提案を行う中で、サッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手を起用した広告提案を行っていますが、たとえば彼が「俺はいまSIXPADでトレーニングしている」とインスタグラムに投稿したとしたら、コンマ1秒の差もなく彼の抱える2.4億人(2020年11月現在)のフォロワーに届きますよね。
ほんの一瞬で2.4億人の手元へ情報が行き渡るのですから、これだけでも莫大なプロモーション価値があります。ここに広告代理店はどのような役割を果たせるか。
これはロナウド選手に限らず、万人に言えることです。つまりSNSやECショップが誰でも日常的に使えるようになった現代は、「一億総広告代理店」状態というわけです。
CIRCUSはそこに、自社の持つグローバルネットワークを活用し、「ヨーロッパならチャンピオンズリーグの真っ只中だからSIXPADとしてこういうプロモーションをしよう」「中国ならW11(ダブルイレブン)の前だからこうしよう」といった具合に、世界で同時多発的に広告戦略を提案できます。ここでも、部署や地域で人が隔絶されていない、プロジェクトクリエイティブのビジネスモデルが相乗効果を生むわけです。
——今年は新型コロナウイルスが世界的に蔓延しましたが、事業にはどのような影響がありましたか。
河野社長 もちろんまったく受けていないわけではありません。しかし、我々の場合、コロナ以前からデジタル化の推進や、先ほど紹介したSNSやECを活用した世界各地での広告サービスの展開をやってきたからこそ、ZOOMをはじめとしたツールの導入も早かったし、ネットワークを介したグローバルな広告キャンペーンができる体制が取れています。
私も海外にいた時期がありましたが、まさにいまニューノーマル(新常態)とも呼ばれる新たな生活様式の中で、グローバル対応は必須です。我々は小さいながらも、総合広告代理店であると同時に、グローバル企業としても拡大していきます。
貴重な才能は、社会的評価の外にある
——河野社長が求める人材とはどのような人でしょうか。
河野社長 まずお伝えしたいのは、我々が新たな人材を採用するのに必須な条件などないということです。
スキルや学歴、学生時代に何をやっていたのか、性別、年齢、人種、国籍も一切、度外視していただきたい。
我々の行う広告事業のトータルプロデュースに必要な力とは、そのような誰にでもわかる明確な指標で測れるものではありません。
重要なのは、仕事に誠実に向き合える人かどうかです。
私はいつも社員に「何か一つでも『いいな』と思える部分があったら通しなさい」と言っています。それは履歴書に書かれた綺麗な文章や数値には表れません。本人と接したことで初めて直感的に感じられる良さです。
多くの企業の面接というのは、プレゼンがうまい人が通る構造になっています。しかし、プレゼンが良ければ良い人材かと言えば、そうではない。
弊社にも喋りがまったく得意じゃない人がいます。かく言う私自身も、学校の成績が良かったわけでも、取り立てて得意なことがあったわけでもありません。
面接での喋りが上手じゃなくたっていいんです。むしろ学校の試験や、授業の成績などのような社会が一方的に定めた評価指標の「外」にこそ、その人の本当の良さがあると考えているのです。
もし語学力や知識が不足していても、仕事に誠実に向き合える人は、会社に入ってからいくらでも学んで力を付けます。面接の時点で能力がある必要などありません。
だからこそ、下手にスキルがあったりパフォーマンスができたりすることよりも、仕事と誠実に向き合うことができることの方が、圧倒的に重要なのです。
【社員インタビュー】
部分最適ではなく「全体最適」で提案できる醍醐味
ここからは社員の大村春洋さんへのインタビューです。入社した理由、仕事の内容、同社に向いている人材像などについて伺いました。
大村 春洋(おおむら・しゅんよう)
株式会社CIRCUS CIRCUS上海 総経理(代表取締役)
2012年に国際基督教大学を卒業後、アメリカへ2年間留学。2015年に東南アジアのスタートアップに1年間たずさわり、帰国後の2016年にCIRCUSに入社。既存のクライアントから新規の案件まで幅広く手掛けるCIRCUS1の営業マン。
——最初に、現在担当されている仕事内容を教えてください。
大村さん 弊社はプロジェクトごとにチームを組むのですが、役割をいくつか分担している中の一つとして「リーダー」として複数のプロジェクトを担当しています。
クライアントさんはもちろん、チーム内の折衝、弊社社長の河野とのやり取りなど、プロジェクトにおけるコミュニケーションは網羅的に把握してディレクションしています。
また、弊社の中国拠点である「CIRCUS上海」の総経理(代表取締役)という立場も務めさせていただいており、中国関連の案件や現地とのやり取りは基本的に僕が担当しています。
他にも新規案件が5〜6件ほど動いており、担当している業務すべてでいうと、同時に10〜15個ほどのプロジェクトを動かしています。
——国内外でプロジェクトが同時進行しているということですが、国内においては具体的にどのような業務をされているのでしょうか。
大村さん まず一つは、クライアントの要望を聞きながら、戦略立案や提案書の作成をしています。また戦略や提案をまとめる上でのステークホルダーとの折衝やディレクションを行っています。
一般的な広告代理店だと、提案はプランニングチームが主導になっていたり、企画確定後の実行フェーズではイベントチームなどに業務が分散していくようなフローがほとんどですが、CIRCUSは企画から販売まですべて途切れがなく、ワンチーム、ワンストップでプロジェクト全体を請け負っています。
部分最適ではなく、全体最適でクライアントと向き合えるのが弊社の強みでもあり、仕事の醍醐味でもありますね。
普通なら20年かかる経験を「3年」で積む
——現在は重役を担当されていますが、入社までにはどのような経緯があったのでしょうか。
大村さん 僕は新卒ではなく中途でCIRCUSに入っているんです。ICU(国際基督教大学)を卒業後、2年間アメリカに留学し、東南アジアの企業に就職して1年間ほど働いていました。
そこから日本に帰国して、中小規模のWeb制作会社で1年弱ほど営業職で仕事をしていた頃、ふと思ったことがありました。
それは「周囲の友人たちは新卒から何年も経歴を積んでいるのに、僕は彼らがやってきたことを何も経験していない」ということです。
経験値のギャップを埋めなければさらに置いていかれてしまうと焦燥感にかられた僕は、「彼らが10年かけて積む経験を、僕は3年で積んでみせよう」と決めました。
そんな時に転職エージェントさんの紹介でCIRCUSの存在を知りました。僕は「ここなら圧倒的な経験値が積めるかもしれない」と思う一方で、「合わなかったら辞めればいいや」くらいの感覚も併せ持ちながら、入社することに決めました。
「走りながら」力を付ける
——実際、入社してからのお仕事では、どのようなことにやりがいや楽しみを感じますか?
大村さん やはり若くても経験がなくても重要な役割やプロジェクトを任せてもらえることは大きいですね。CIRCUSは「足りないものは、走りながら身に付ける」というスタンスなんです。
たとえば僕の場合、まだ入社2年目程度の時にSIXPADの仕事でクリスティアーノ・ロナウド選手のマネージャーさんと実際に連絡を取ったり、モデルの菜々緒さんを広告に起用させてもらうために事務所に何度も行って交渉したりもしました。ビッグイベントの責任者をすることだってありました。一般的な広告代理店なら、40〜50歳くらいにならなければ担当できないような仕事だと思います。
僕は特別な能力があったわけでも、仕事ができたわけでもなかったのですが、自分の能力値以上の仕事を任せてもらうからには、それを遂行するために死に物狂いで努力するわけです。
だけど、もちろん最初からうまくはいかないものです。怒られたことなんて、数え切れません。というより、毎日、怒られていましたね(笑)。
——毎日怒られながらも試行錯誤を繰り返すのは、かなり忍耐が必要そうですね...。
大村さん もちろん多少は忍耐力も必要ですが、捉え方を変えればプラスです。要は、「怒られる」ということはフィードバックをもらえていることなので、それを素直に受け止めて次に活かす。また怒られては次に活かす。それを繰り返していくと、最初はわからなかった仕事の感覚が掴めるようになってくるんです
普通は「怒られたくない」と思ってしまうものですが、そこを「あえて怒られに行く」くらいのスタンスでいると成長はより早くなると思いますね(笑)。
経験やバックグラウンドは無視して、プロジェクトリーダーを任せてもらえることは、他の広告代理店ではまずないでしょう。“名ばかりリーダー”をさせてもらうことはあるかもしれませんが、うちで任されるのは本気でプロジェクトを回すリーダーです。
良い意味で逃げ道がない。だからこそ圧倒的に成長できる。1年目でも2年目でも若いうちから平等にチャンスをもらえるのがCIRCUSの強みだと思います。
「能動と責任」が仕事を開く
——足りない力は、走りながら身に付けるという一貫したメッセージがありますが、入社前に身に付けておくと良いことや、経験しておくと良いことはありますか。
大村さん 弊社のような「広告代理店」を目指す人なら、なるべく多くの広告を見ておくことをお勧めします。
課題や研究に追われて多忙な学生さんもたくさんいると思いますが、それでもやはり学生時代は社会人として仕事をしている時よりも時間があるし、自由に組めると思います。
そんな時にこそ多くの広告を見ておくと、どんなCMや広告、プロダクトがあり、何が良くて、悪いと思うか。あるいは好き嫌いの感覚なども養われると思います。広告を見るセンスは短期的に手に入るものではなく時間をかけて磨くものなので、入社前に広告やコピー、デザインなどのセンスを磨いておくのは重要だと思います。
入社してからはやはり自分のプロジェクトを回すことで手一杯になり、なかなか時間が取れなくなりますから。
——たしかに、スキルは身に付いても、センスは一朝一夕には磨かれませんね。
大村さん そうですね。でもスキルもやはりまったくないよりは、もちろんあった方がいいです。特に僕が実感しているのは英語の重要性です。
僕は大学卒業してからの海外期間である程度の英語力を身に付けました。スピーキングはさほどうまくはないですが一定レベルは話せるようになり、ネイティブのリスニングや、メールのやり取りはできるようになりました。
日本企業のクライアントでも、海外拠点とのやり取りをする場合、送られてきたメールや資料が全文英語だったなんてこともザラにあります。
そこで英語がまったくできなければ、この場面で得られる仕事はゼロになってしまいます。だけど、少しでも読み書きができれば、なんとなくは理解できるので、わからないところはグーグル翻訳で調べながら読み解くこともできます。この英語力は、留学しなくても、大学の授業や高校までの英語力で身に付きます。
僕が入社1年目でクリスティアーノ・ロナウド選手や、フィギュアスケーターのアリーナ・ザギトワ選手のマネージャーとのやり取りができたのは、多少の英語ができたからです。
英語力だけで仕事の領域が格段に変わることを僕は実感しているので、少しでも勉強しておくことをお勧めします。
——最後に、どのような人材に入社してほしいと思いますか。
大村さん とにかく最後まで責任を持って仕事をする人ですね。それができる人に入ってほしい。僕も採用担当者として面接をさせていただくことがあるのですが、いつも伝えているのはこの一点です。
採用担当者の目線としては、「仕事は最後まで責任を持って」とは言いますが、もちろん最初から一人で全部できるなんて思っていません。求めるのは能動性と責任感です。
たとえば仕事で行き詰まった時に「ここがわからないんですけど、どうすればいいですか」と先輩に問いのアクションをかけ、答えを引き出した上で仕事を前に進めていくことは、きっと誰でもできるはず。それをせずに、「自分にはできません」と匙(さじ)を投げてしまう人が意外といます。
先ほども弊社の強みとして挙げた、経験がなくても仕事を任せてくれる企業風土の核はここにあるんです。
つまり、先輩は手助けするけれど「あくまで担当は君なんだ」と。本人の能動性と責任感を期待しているんです。逆に言えば、これがある人はあらゆる仕事を遂行していけると思いますね。