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今回は、コンサルティングファームの採用選考においてカギを握る「ケース面接」についてご紹介します。
ある課題に対して解決策を導いていく過程と考え方を評価するケース面接は、難しくて苦手と思っている人も多いでしょう。しかし、ケース面接は特にコンサルティングの分野において重視されるので、ぜひ基本をおさえて備えておきたいですね。
まずはケース面接の全体像を理解し、取り組む上でのポイントを確認して備えていきましょう。
「ケース面接」とは何か?
コンサルティングファームで重視されるケース面接
今回のコラムでは、皆さんの苦手意識が大きい傾向にある「ケース面接」の概要についてお伝えしていきます。
ケース面接とは「ある特定の課題に関して、一定の仮説を置きながら構造化し、ボトルネックを特定して、解決策を導き出す行為」を指します。
コンサルティングファームにおける試験の中で全体の50〜60%の重要度を占める重要な面接試験です。
実際にケース面接の出来不出来によって、どこのコンサルティングファームに入社できるか(戦略系か総合・会計系か)、そもそもコンサルティングファームに入社できるか否かが変わってきてしまいます。
しかしながら、世の中に出版されているケース面接の対策本では、ケース面接の全体を理解するのが困難なのが現状です。 そこで、このコラムでは、ケース面接の初歩を理解できるよう、ケース面接の全体像に注目します。
ケース面接対策の第一歩として読み進めてください。
なぜケース面接が求められるか
コンサルタントの適正を判断しやすいケース面接
ケース面接がほとんど全てのコンサルティングファームで求められている理由としては、ケース面接が「コンサルタントになるための素養があるかどうか」を判断するために適切であるためです。
ES/職務経歴書と筆記試験でコンサルティングファームに入社するための基礎的な能力を判断した後、コンサルティングファーム側で判断すべきポイントは 「コンサルタントとしてやっていける人物かどうか」です。
そのため、ケース面接ではコンサルタントとしての適正を総合的に見ています。
ケース面接で評価されるポイント
面接官が注目する3つのポイント
具体的に、ケース面接で評価されている項目は下記のように、大きく分けて3つあります。
次の項目でそれぞれ、具体的に見ていきましょう。
①論理的思考力/思考体力
ケース面接を乗り越えるためには、論理的思考力、特に物事を構造的に捉える力が必要です。
例えば、下記のようなケースの問題が出されたとして考えてみましょう。
論理的思考力が弱い方や、アイデアベースで物事を考える癖のある方の場合、頭にパッと思いついたことだけで物事を捉えてしまうことがほとんどです。
そのため、下記の例ような解決策を導く傾向にあります。
「ボランティアの数を増やそう」
「清掃するために税金をあげよう」
「ゴミ処理場の設備を最新にしよう」
しかし残念ながら、これでは富士山のゴミを根本的に減らすことはできませんし、そのような施策であれば、既に取られているはずです。
論理的思考力のある場合であれば、回答を導く前に問題を構造的に捉えていきます。
なぜなら「この問題で本当に議論すべきポイント=論点」に対して、施策を打ち出さなければ、根本的な解決が不可能だからです。
ケース面接に合格するレベルの思考力としては、
と構造化できる状態です。
実際のコンサルタントの仕事も枝葉末節に囚われず、本当に重要な1つ〜2つの課題を発見し、解決することです。そのため、ケース面接では以上の問題で論理的思考力を見ています。
加えて、ケース面接ではもうひとつ「思考体力」を見られています。 これは、「どこまでも様々な方向から問題を考え続けられるか」という能力です。
実際のケース面接では、下記の例のような質問が面接官から飛んできます。
これらの質問は面接官から 「考えることが好きかどうか?」という視点を見られています。
*単純に面接官も知的好奇心が旺盛な方が多いので、「いろいろな角度で考えるのが好き」ということもあります。
コンサルタントも常に顧客の課題を考え続ける職業です。そのため「考えることが嫌い」という方には向きません。
従って、「問題を考え続けられる人かどうか」という思考体力も論理的思考力と同時に評価されています。
②ロジカルコミュニケーション
ロジカルコミュニケーションとは、「わかりやすく簡潔に相手に意見を伝えられるか」「相手と適切なキャッチボールができるか」というコミュニケーションのことです。
ケース面接は、代表的な「東大ケース本」「過去問力」のような教科書とは異なり、生身の人間とのコミュニケーションの中で解答を出していくことが必要です。
しかしながら多くの人が、これらの本の解答のように「一人で全てを決め、自分の考えを発表会する」かのように面接官と接してしまっています。
これは明らかに間違った方法です。
面接官も生身の人間であり、面接官が出した問題も何らかの背景や仮説があります。
もしかしたら「東京と大阪ではエスカレーターに乗る時の左右の位置が逆である」ように、そもそもの前提が全然異なっていることもあるかもしれません。
したがって、下記に挙げる例のように、相手と適切なコミュニケーションを取ることがケース面接では求められているのです。
コンサルタントとしてクライアントに行く際を考えても「全部を自分で考えること」はできません。クライアントから情報をヒアリングし、それを理解した上で、更に質問をして本当の課題を考えたり、情報を集めたりするのです。
従って、実際にコンサルタントになるためにも、ケース面接では「ロジカルコミュニケーション」は重要な要素です。
③立ち回り力
最後に立ち回り力です。
立ち回り力とは、ケース面接の中で「議論を計画的に進めたり、修正したりする能力」のことです。
ケース面接は20〜30分間で行われることが多く、最初の5分を個人のワークとして使うことがほとんどです。 この5分間の中で適切に構造化ができるか、そして実際の議論を計画的に進めて行けるかはケース面接を成功させるために重要です。
同様に、ケース面接では面接官からの指摘で間違いに気がついたり、議論が浅かったことを指摘することがあります。
誰がケース面接を行っても完璧に解くことはできませんので、これは必ず起こることです。
そのときにケース面接の立ち回り力として重要な点が2つあります。
実際のクライアントワークでも、
「周りのクライアントから聞いてわかること」
「クライアントから指摘されてわかること」
があります。
その際に、如何に議論・プロジェクトを修正できるかどうか、これが求められているのです。
ケース面接の5つのパターン
ここまで、ケース面接で重要なポイントをお話してきました。
これらのポイントを理解した上で、ケース面接で問われる5つの問題パターンを見ていきましょう。
①売上増加系
売上増加系は、特定の企業や組織の売上を向上させるケースです。
具体的なケース例を見てみましょう。
これらのケースにおいて、売上をあげるために「フェルミ推定」を行う必要があるものもあります。
この別パターンとして、下記のケースのように人数を増加させるケースも存在します。
「売上増加系」は、最もオーソドックスな問題であり、コンサルティングファームでもよく出題される問題です。
②利益増加系
利益増加系では、売上ーコスト=利益と考え、売上とコストの両面からケースを解いていくことになります。
コストは「固定費と変動費」に分けて議論していくと評価につながります。
売上増加系よりも難易度が高く、ベイン・アンド・カンパニー以外のコンサルティングファームで出題されることはほとんどありません。
③二者択一系
二者択一系は、「ある課題をやるべきか/否か」ということを判断する問題です。二者択一系のポイントは、「意思決定を左右する要因を探す」ことが重要です。
二者択一系もマッキンゼーを中心に、いくつかのコンサルティングファームで出題されています。
④公共系
公共系の問題は、社会の大きな課題を解決する問題が出題されています。公共系では「誰の視点から解くか。どのスパンで考えるか」ということが重要です。
公共系もほとんどのコンサルティングファームで出題されている問題です。
⑤新規事業系
新規事業系では、ある企業の新規事業を検討する問題です。新規事業系のポイントは、「なぜその新規事業をするのか」「何年間のスパンなのか」を定義することです。具体的には、下記のような問題が出題されています。
ケース問題の解き方
最後に、ケース面接の解き方について、解説をしていきます。
ケース面接の問題を解いていく手順は下記の5つです。注意点としては、あくまで一般的な雛形であり、必ずしも常に有効なものとは限りません。
ケース面接のヒントとして、ご覧ください。
①前提確認
まずは、前提の確認です。これは既に確認したように、ケース面接の方向性を決定する上で重要です。
「間違った問題」を解くほどケース面接には時間の猶予がありません。特に 「なぜ問題なのか?」「誰の何の問題か?」という点を掘り下げて面接官と共有することを忘れないようにしましょう。
②問題の構造化
次に、問題の構造化です。ここでは、現状を把握し、問題を構造化することが必要です。
問題を構造化する上では、
という順番で考えていきます。そのときに、因数分解をしていくことが一般的です。
という問題では、
と定義します。そこで、問題を分解して考えると、
の2個に分けられます。
③ボトルネックの把握
3番目に、ボトルネックの把握です。
ボトルネック把握では各要素のうち、どこに課題があるのかを考えます。先程の花粉症のケースでは、「花粉症を発症している人をどう減らすか?」において、下記の2つがボトルネックです。
一方で、
「病院で花粉症と診断された人をどう減らすか?」についてのボトルネックは、
④施策の立案
4番目に、(a)~(d)の項目に対して、具体的な施策を立案していきます。
→花粉を発する木を切る。
花粉を予防する植物を植える。
(b)花粉を吸って発症する人をどう減らすか
→マスクを配ってマスク着用を必須化する。
発症しないように予防注射に補助金を出す。
花粉を悪化させる排気ガスをEVに補助金を出して減らす。
(c)病院に行かずに花粉症を治せるか
→花粉症予防の薬に保険適用する。
病院にかかる必要があるかどうか花粉症検査薬を配る。
(d)花粉症の定義を変えられるか
→従来の花粉症は重度患者のものとし、
軽度患者のための「花粉敏感状態」などの
新しい定義を作る
⑤施策を評価する
最後に、これらの施策の評価をしていきます。
先程の施策の中で、花粉症を実質的に減らせる可能性の高さと実行にかかるコストの低さで評価をしていきます。
評価の際に、「あきらかにない」と思われる施策は、このタイミングで落としてしまっても問題ありません。
今回のケースでは、下記の4つの施策を評価していきます。これらに関して、表にまとめて分析していきましょう。
施策名 | 花粉症患者削減効果 | コスト | 総合評価 |
マスクの着用義務化 | ◎ | ◎ | 1 |
予防注射への補助金 | ◎ | △ | 2 |
EVへの補助金 | ○ | △ | 3 |
花粉症の薬の補助金 | ○ | △ | 3 |
ケース面接の当日はマトリックスもしくは、このような表にまとめていくのが重要です。
特に、ホワイトボードがある場合は、まとめ方も評価に入っていますので、このような図をつけるのが重要です。
問題を構造化した上での施策立案・評価がカギ!
今回は、ケース面接の全体像を把握した上で、問題提起であるケースにどのようなタイプがあるのか、そして、問題対する解決策をどのように導き、施策を立てて評価していくのかについてお話してきました。
今回のポイントを改めてまとめてみましょう。
・「ケース面接」とは…
ある特定の課題に関して
①一定の仮説を置きながら構造化
②ボトルネックを特定
③解決策を導き出す
→ 「コンサルタントになるための素養があるかどうか」を判断しやすい
・ケース面接で注目されるポイントとは…
①論理的思考力/思考体力
②ロジカルコミュニケーション
③立ち回り力
・ケース面接における5つの問題パターンとは…
①売上増加系
②利益増加系
③二者択一系
④公共課題系
⑤新規事業系
・ ケースの問題を解く5つの手順とは…
①前提確認
②問題の構造化
③ボトルネックの把握
④施策の立案
⑤施策の評価
ケース面接では、面接官とのコミュニケーションの中で、問題を構造化し、施策立案・評価を行なって問題解決へと導く力が求められます。
ケース面接では、今回の内容を元に、具体的な評価をしていきましょう。
👤この記事を書いた人
森泰一郎
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Advantage Career代表。森経営コンサルティング代表。
東大、東大大学院卒。大学時に起業した後、戦略コンサルティングファームに入社。
大手向けの新規事業立案、マーケティング、M&A業務に携わる。
ITベンチャーのラクスルにて経営企画のマネージャーを行った後、大手企業にて取締役CSOとなる。
https://www.advantage-career.com/