レポート 2020.11.04
【セミナーレポート】「人材育成」の正解とは?DeNA経営企画部出身の2名によるオンラインセミナー/僕たちのHIGH OUTPUT MANAGEMENT -新しい人材育成のカタチ-

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    イベント概要

    企業の人材育成は成果に時間もかかるため、注力していない企業も意外と少なくはありません。しかし、経営戦略のための人材育成は、将来の企業運営にも大きく関わる重要な要素であります。今回は、ビジネスマン向け実践型育成トレーニングを提供する「EVeM」と「inglewood」のサービス責任者のお2人に、経営戦略のための新しい人材育成について語ってもらいました。「人材育成」に課題を抱えている経営者・人事担当者・マネージャーの方は必見です。

     

    【登壇者情報】

    ●長村禎庸

    1982年大阪生まれ。2006年に大阪大学卒、株式会社リクルートへ入社しゼクシィの広告営業を担当。その後2009年に株式会社ディー・エヌ・エー入社。広告事業部長、㈱AMoAd取締役、採用マネージャー、経営企画マネージャー、PMI責任者、㈱ぺロリ 社長室長兼人事部長等、様々なチームのマネージャーを担当。2017年には株式会社ハウテレビジョンへ入社。取締役COOとして停滞する同社をターンアラウンドし、2019年東証マザーズ上場へ導く。2020年株式会社EVeM設立、代表取締役となる。

     

    ●岸本裕史

    1986年東京生まれ。新卒でディー・エヌ・エー入社。モバゲー全盛期のソーシャルゲーム開発部にてディレクター、プロデューサーとして、国内外向けゲーム開発に携わったのち、経営企画部に異動し、経営会議の管理やM&Aなどを幅広く経験。その後、医療系ベンチャーに移り、新規事業の立ち上げなどを手掛け執行役員として従事。2019年にイングリウッドに参画し、AI戦略事業本部 ビズデジ ゼネラルマネージャーとして新規事業「ビズデジ」の立ち上げを中心に、事業M&A、アライアンス等幅広い領域で事業推進を行う。​​​

     

     

    経営戦略と人材戦略の紐付け

    まず岸本氏が語ったのは、経営戦略と人事戦略のバランスについて。企業の人材育成において、研修を実施しても実務では活かしきれていないという人が多く、人事が特に悩むポイントだったりする。それらの要因は、経営戦略と人材戦略のバランスが難しいからだという。

     

    引用:経済産業省持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書

     

    経済産業省発表した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書」によると、人材マネジメントの課題として一番多い回答だったのが”人材戦略と経験戦略が紐付いていない”という回答で、全体の3割を超える。人材戦略と経営戦略の紐付けが一番の課題であることが研究としても発表されている。

     

    その研究報告で、人材を考える場合の視点は以下の3つが挙げられる。

     

    ・視点1:経営戦略との連動

    ・視点2:ギャップの定量把握

    ・視点3:企業文化への定着

     

    打ち手に関しては人材育成が関わる要素として、M&Aやスピンオフ、副業などがあり、昔は採用や育成だけでよかったものが、現在では”直接的に”事業戦略と密接に関わざる得ないポイントが増えているように感じられる。

     

    「アウトプット」と「会計情報」

    続けて岸本氏は「財務会計」と「管理会計」の違いについて語った。

     

    財務会計は様々な企業を、銀行や投資家といった視点で横比較するために作成するものであり、事業を実際に推進するための有効な手段としてビズデジがより重じているものは管理会計である。管理会計の目線でしっかりと事業をどう把握・運営するのかをビズデジではとても大切にしている。

     

    チームではもちろん各個人が、自分の事業活動のアウトプットが会計の数字にどう影響をしてくるのかを理解をすることができなければ、会社の望む結果数字に沿って仕事のクオリティを上げることは難しい。この軸にそって日々の行動設計ができることが重要であると伝えている

     

    事業戦略に紐付け、人事方針に落とし込めるかが鍵

    人材に関わることは他の事業に比べても重く、感情も入り混じりがちなため、会社のフェーズによっては今はしないと決めることも大切。全ては事業活動のためと割り切って運営することも大事であると長村氏は伝える。

     

    事業の戦略に紐付いた人事方針まで落とし込めているのかが重要。例えば、事業の戦略に合わせた人材育成をする期間や、事業戦略に合わせた制度を改定する期間など、それぞれの事業戦略を明確に理解し、事業の戦略に紐付いた人事方針や組織方針をどう立てるかが重要である。

     

    この辺りの紐付けをする人やフレームワークがまだ足りていない企業も多い。将来の事業計画に対して人材を育成する、チームを運営していくマネジメントはどうあるべきかの紐付けはとても重要だと伝えた。

     

    大切なのは「学ぶ」「つながる」「実践する」

    長村氏が代表を務めるEVeM社の教育プログラムでは、人が育つのに大切なことは「学ぶ・繋がる・実践する」の3つだと提唱している。学ぶためのポイントとして大切なのは「成長課題を設定する」「”学ぶ”をミッションに入れる」こと。

    長村氏が代表を務めるEVeM社の教育プログラムでは、人が育つのに大切なことは「学ぶ・繋がる・実践する」の3つだと提唱している。学ぶためのポイントとして大切なのは「成長課題を設定する」「”学ぶ”をミッションに入れる」こと。

     

    【学ぶ】

    ”学ぶ”を仕掛けるためには、次のステージを明確化してあげることが重要。成長課題の設定なしに学びを進めても意味がないため、 実務だけでは足りない部分を本やセミナー参加など学ぶことの重要性を教え、学ぶことを条件化・ミッション化することが大事になる。また、学んだ出来事を抽象化し、成功した要因などを言語化をすることで、どの仕事を任せても成功することができるようになる。。

     

    ベンチャーなどでは、実践だけで身につけたり裁量が大きすぎることで「ナレッジ」が身につかない人も多く、学ぶことが軽視されている背景も多く見られる。しかし、体系化した学びかないことで再現性もないため、人に教えられないなど、成功率の高い仕事をすることが難しくなってきている。誰かに仕事をとられないためにも学ぶことはとても重要であることを伝えた。

     

     

    【つながる】

    人材育成はとてもハードなため、マネージャーが育成をする際はテーマによっては2人〜3人ほどの複数で行うことが望ましい。マネージャーは「脱中心」を心がけ、育成対象者同士がテーマで繋がり高め合って支えることをデザインする場を作ることが重要である。あえて学びの中心から意図的に抜けて、教わる人同士が切磋琢磨し考えあえるプランニングを作ることが大切だと語った

     

    【実践する】

    学んでも実際の業務の具体的な課題で学んだことを活用しない限りは仕事はできるようになはらない。育成も成果のため、必ず目標設定をしてからプランの設定をすること。いつまでにどのような状態にしたいのかを明確にしておかないと育成にはならない。

     

    重要度が高くスキルが不十分な業務は、途中で巻き取る可能性が高いため実践の育成には向いていない。業務の重要度が低く、スキルが不十分なゾーンでの仕事を実践させることが大切であり、ティーチング・コーチング・フィードバックはマネージャークラスは必須のスキルである。

     

    「育成は投資」だが見極め、戦略的に行う必要がある

    育成には膨大な投資が必要になるが、決して平等ではないため誰の育成を行うのか投資対効果を見極め、戦略的に行う必要がある。

     

    日々の業務の中で勝手に人材は育つケースはもちろんあるが、それは偶然の産物であり毎回ではない。重要なのは計画的な育成であるかということ。そうでなければ、企業やチームが成功するための育成という戦略や戦術を捨てているということでもある。企業としてチームが成功するために育成が大事だと思うのであれば、どう育成しどういう状態に持っていきたいのか、計画的に育成はするべきだと語った。

     

    人材育成に即効性はないことを理解し、中長期的な施策の一環として考える

    育成に即効性は期待しにくく短期では成果はでないため、中長期的な施策の一環としての選択になる。会社としての短期的な成果と中長期な成果、どちらが重要かを吟味して、中長期的な成果のために育成を行うべきである。そのため育成は現在の会社の状況を考えることが重要。

     

    ミドル層に関していえば、経営陣は中長期を見据えているが、マネージャーは中長期で施策を打っても短期で評価されやすい。人事評価は短期になるので中長期的な人材育成の成果が見られないから、ミドル層は損だと思われがちだか、そこは視座を上げ「会社に必要か?」を意識して育成をすることが大切。中長期的には自分の評価が上がることにつながる。

     

    各層で行うべき育成

    次に、経営者、マネージャー、人事でそれぞれ行うべき育成について語られた。

     

    【経営者】

    育成が大事というだけではわからない。言葉だけで「育成が大事」といっている会社は、現場によって育成の重要度ばらつきが出るため、会社としての、育成をする目的や重要度、方針を経営陣で決めて共有しておくことが大事。

     

    また育成に対する重要度や解釈も人によっては違うため、育成の時間や費用など育成投資に関する方針計画を策定することも並行してしておく。

     

    【マネージャー】

    経営の育成方針を受け、自身の育成投下時間の方針を決め、◯月までにこの状態まで持っていくなどメンバーの育成目標を設定する。「学ぶ・つながる・実践する」で育成プランを策定し、育成目標達成に向けてメンバーを育成する。

     

    【人事】

    会社の方針を受け、各マネージャーが行う育成施策の支援を行う。育成プランと育成目標が立てられているのか確認とそれが正しいかの最適化をHRが第三者的に関わる。現場で行われている育成の最適化とモニタリングが最大のミッション。各部門に寄らない全体的な育成施策と立案・実行は人事にしかできない。社内勉強会や研修、副業解禁なども育成プランに含まれる内容になる。

     

    そもそも育成は経営者ではなく、マネージャーや人事の人が社内の現状を報告し自ら上申することが大事であることを伝えた。

     

    育成とは社員に対する真心の証

    そもそも育成をしなくていい会社やチームはない。採用だけで中長期的な成長は賄えないもの。急拡大を目指すベンチャー企業なら特に、事業成長のボトルネックは人になるため、常に育成は意識しておくことが大事。マネージャーなど、後任を育成しなければ、自分のキャリアは変わることない。

     

    育成投資ゼロの会社で働きたいと思う人はいないし結果的にいい人材は残らない。あるとき育成が重要だと思っても急に進められることはできないため、継続的なプロセスが大切である。育成投資をする際は、時間やコストが計画的に行い、アテンションは常に全身全霊を意識して実施することが重要であり、育成とは社員に対する真心の証でもあると長村氏は伝える。

     

    事業成果に繋がる意思決定の重要性

    引用:パーソル総合研究所「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)

     

    日本は会社として人材育成投資を行う企業は少なく、14ヵ国で比べても自己学習意識欲が低いという調査結果がある。学ぶということが何か、本人にわからないまたは自覚がないことがあるので、会社として育成が何かを位置づけることが大切だと岸本氏は語る。

     

    人材育成とは、マネジメント施策ではなく、受けるメンバー各個人の意志を含めた事業活動の選択肢として存在するものであり、メンバー視点でも育成による成長はひとつの手段である。究極、人に頼るので育成は必要ないというスタンスもそれはそれで有りうる選択であり、自分ができることがゴールではない。事業成果に繋がる意思決定が重要であるということを岸本氏は伝えた。

     

    参加者からの質問

    最後に、セミナー中にあった質問をいくつかご紹介します。

     

    Q.『育成目標』『育成計画』の作成はマネージャーからトップダウンで設計していますか?それとも育成対象としっかりすりあわせて行うものでしょうか。

     

    長村氏:僕はトップダウンだと思っています。

    育成する対象に、あなたをこうしたいとするのは難しいことでもあるし、戦略的にこう育てたいという経営の意思でもあるので、マネージャーからのトップダウンでいいと思うし、育成目標をメンバーに開示しなくてもいいと思います。

    もちろん、ここまでやってほしいという要望は出していいと思いますが、その詳細な目標とかプランとか出されてもメンバーからしたらそういうことをコントロールされるのか、、、と思うこともあると思うので、マネージャーの中に秘めて持っておけばいいのではないかと思っています。

    マネージャーと経営陣で握るというのが大切だと思います。

     

    岸本氏:僕も基本は長村さんに同意です。

    育成される側は、「何を学ばないといけないのか」がわかっていないから育成が必要なはずなんですよね。

    多分、すり合わせしないといけない育成というのは、育成するトピックが間違っていたり、得たい結果や実戦のポイントが既に本人がわかっていることの再育成になっていたりするのではと思っています。

    ただし、経営視点をもたせたい、といった、「伝わり方に伝える側が気を使う場合」関しては時々すり合わせが行われることがあるかと思います。

     

    Q.人事が行う育成で自ら上申することが大事であると言っていましたが、経営者への提案する上で抑えておきたいポイントを教えてください。

     

    長村氏:提案するときのポイントは2つあると思っています。

     

    ①「会社のために」という文脈をしっかり伝えること

    どうしても育成と発してしまうと、経営者はまた綺麗ごとが来たな、と思ってしまう可能性があります。そうではなくて、「会社のために」だったり、「この会社のフェーズだから」だったり、自分の私的な関心や指針は一切無視して、会社のために合理的な提案をしています、という文脈が必要だと思います。

     

    ②育成をしない上での弊害を伝える

    育成はリターンが想定しにくいため、リターンやメリットの観点で提案すると説得がしにくいことがあります。そのため、育成をしないことの弊害を説明した方がいいと思います。1つ目のポイントを伝えた上で、育成をしないとうちの会社がどうなりそうなのか、何が足りなくなりそうなのか、そういう弊害を説明できればリターンを説明できなくても伝わりやすいです。

     

    文脈として、会社のためであること、伝えるべきはROIよりも弊害というのがポイントです。

     

     

    岸本氏:ビズデジでも、長村さんがおっしゃった2点がポイントだと伝えています。

    育成をROIで図ろうとしても結果が出るか?は事業のトレンドも強く影響してしまい、これを排除しようとしても、結果のROI計測単体でかなり工数がかかってしまいます。ですので、図ることは無意味ですよというのを添えて伝えるといいと思います。

     

    成果が事業トレンドなのかそうじゃないのかを切り分けるのは、R&D観点からすると再現性を図るための研究としてはやってもいいかもしれないですが、多大な工数がかかるので研究に余裕があればやりましょうという感じだと思います。ビズデジはこのコストがかかる部分を、事業収益を使って可能にしていますが、単体企業の取り組みとしては余裕ある企業でないと難しいと思います。

     

    Q.マネージャーの中にも、育成に興味がない人や育成の重要性を理解していない人ほど、育成を学ばないという方がみられると思っています。そういった方が育成に本気になれるようなアプローチのアイディアがあればお伺いしたいです。

     

    長村氏:経営戦略から落とし込んだ育成に対して、興味のありなしで片づけるのは良くないですね。

    「経営戦略の中で育成というのがこういう位置づけとして重要だから、あなたにミッションとして課します」というように下すことが大切です。

    興味のあるなしは関係なく、会社にとってやるべきだからやってください、やらないべきなら抑えてください、という話だと思います。

    逆に、興味がある人に対しては抑えてくださいというアプローチをすることも大切になります。

     

    岸本氏:完全に同意ですね。重要性はまだしも、興味で事業推進施策を検討しないのは、仕事としては間違ってると言わざるを得ないと思います。

     
     
     
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