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東急エージェンシー(本社:東京都港区赤坂)は業界第6位の規模を持つ、1961年設立の総合広告会社です。
1961年に東急グループのハウスエージェンシーとして設立され、現在ではグループ以外のクライアントも多数抱える、売上高が1000億円を超える大企業です。これまでに、「顔採用」(※見た目で判断するわけではありません)や「留年採用」など、ユニークな採用企画を行ってきたことでも有名です。
今回は東急エージェンシーの採用担当者である仲野さんにお話しを伺いました。
PROFILE
仲野大輔(なかの・だいすけ)氏
2004年、株式会社東急エージェンシー新卒入社。
入社後、新聞局に配属となり、読売新聞や日経新聞を担当。新聞広告のプランニングやバイイングを担う。
2008年に人事局に移動になり、新卒採用やキャリア採用、人材開発プログラムの企画立案などを担当。現在に至る。
広告会社は人が資産
――仲野さんのご経歴と、今のお仕事内容を教えてください。
2004年に新卒で入社して、現在15年目になります。
最初の配属が新聞局という部署で、新聞社の窓口になって新聞広告を取り扱う部門で4年半働いていました。掲載希望日や掲載スペース、掲載費用といったクライアントからの様々な要望を踏まえて広告の掲載に向けて新聞社の方々と調整したり新聞社の持つ様々なリソースを活用した広告企画を考え、クライアントに提案し実現させる仕事を手がけていました。
人事に異動になってからは、新卒と中途の採用を担当し、新入社員や若年層に向けた研修や社内セミナーの企画実施や人員配置、人事制度の設計にも携わっています。
――東急エージェンシーさんは「顔採用」や「留年採用」といったユニークな採用企画が有名ですが、仲野さんが中心となって企画されたのですか?
私のアイデアというわけではありませんが、人事の担当者として企画段階からすべてに関わってきました。
弊社の場合、社内で実際に働いているスタッフと一緒に企画を考えて、一緒に形にしていくのですが、彼らとブレストしながらアイデアを出したりしています。そこでは、僕のアイデアはあまり採用されませんが笑
―リクルートサイトを拝見すると社員一人ひとりの働く意味を紹介するなどすごく「人」を見せるスタイルで、人に対してのこだわりを感じます。
広告会社はそもそも人が資産です。広告会社の仕事は、お客様とのつながりによって仕事が生まれ、そのお客様の課題をどうやって解決するかを考えるのも、解決策を実現するのもすべて人です。また、弊社の社風なのか、良い人が多いと言っていただけることも多いので、その働く人の魅力や仕事にかける想いを伝えていくことで、これから広告業界を志望される方にとって、何らかのきっかけのひとつになればと思い、なるべく人にフォーカスしています。
――「広告会社の資産は人」ということは業界で広く言われていることですが、東急エージェンシーさんなりの想いや、解釈は?
大手の競合他社と比較して、個々人の裁量や守備範囲が大きく、お互いに領域を越えて意見を出し合いながらチームとしてクライアントと向き合って仕事をしています。大きな組織のなかで決まった領域や役割の仕事しかしたくない、といった考えの人にはあまり向いていないかもしれません。そういった面でも個々の志向性が大きく問われるので、人にフォーカスしているということもあります。
――その大切な資産に対して、例えばキャリアを支援するといった制度などはありますか?
スキルアップのための研修やローテーション制度のような職域を広げるための仕組みはもちろんあります。また、人事制度でいくとキャリアプランを自身で選択できるようになっています。例えば、部門の責任者になって組織をマネジメントし、より大きな規模でビジネスを手がけていきたい方と、より専門性を高めてある領域のエキスパートになりビジネスを創っていきたい方というように、キャリアに対する志向性は個々で分かれます。弊社ではある一定のタイミングで、それぞれマネジメントとエキスパートを目指すというラインをご自身で選んでいただいています。
――本人の思いで選べるのですね!
そうですね。本人が選択できる形になっています。あとは、出産や育児といったライフイベントから復帰しても安心して働けるように時短勤務を導入したり、まだテスト段階ですが在宅勤務を実験的に導入するなど、多様な働き方に合わせた環境整備も進めています。
――色々と試行錯誤されているのですね。
働く場所についても、会社に来て働くだけではなくて社外でも働けるようにモバイルPC対応したり都内のシェアオフィスと提携して社外でも同じような環境で働けるようにしたり、より効率的な働き方の実現に向けて投資しています。
――ちなみに先ほどの産休育休ですが、復帰される方もたくさんいらっしゃるのですか?
たくさんいます。取得者は年々増えていますし、さらに復職する人の割合もほぼ100パーセントです。また、男性の育休取得も増えていますので、私も子供ができたら長めに休んでみたいと思っています(笑)
想像力
――コーポレートサイトの「宣言」の中で「驚くべき体験をもたらす」とか「体験をデザインする」とか、他社さんと比べても特に「体験」にフォーカスを当てていますね。
マーケティングのトレンドとして「体験価値の提供」ということはよく言われていますが、弊社においては会社が目指すビジョンのなかで「体験」というキーワードを中心に置いています。
弊社は東急グループの流通各社の広告業務も多く手がけてきた実績から「売りの現場に強い」と捉えていただき、店頭で商品を販売するメーカーとの仕事も増えていくことで会社として規模を拡大し現在に至っているという経緯があります。購買に至る現場でどう仕掛ければ手に取って買ってもらえるかといったことを創業から今に至るまでやり続けてきたので、物を売る現場に対しての知見やノウハウが蓄積されています。
今は時代が変わって、インターネットとスマホのようなデバイスの普及により生活者が接するメディアやコンテンツの量が飛躍的に増え、かつ多様化しています。ただ、実際に驚いたり感動したり、人の心を動かしてその先に態度変容と行動喚起を促すことでお客様の事業に貢献すること、それが広告会社として私たちにとって大切だと考えています。
――「広告を打っても物が売れない」と言われていますが、「体験」はそれを解決するとお考えなのですね。
はい。ただ、私たちの言う「体験」は単にイベントやプロモーション活動という意味合いではありません。広告やプロモーション、PRなどすべての生活者との接点において、驚いたり感動したりするような、心を動かす瞬間を埋め込み、気持ちや行動の変化を促していくことを総じて「体験づくり」という言葉で表現しています。そして、人の心を動かす根底になるのが、人が思いもよらないようなアイデアであり、それを形にする実現力だと信じています。
――いわゆる他のハウスエージェンシーと比べて東急エージェンシーさんの魅力は何だと思いますか?
確かに当初はハウスエージェンシーとして設立されましたが現在では、売上の8割程度が東急グループ外のクライアントで残りの2割が東急グループ関連の仕事になるので、仕事の実態としては総合広告会社です。また、取り扱う仕事の領域も、マスメディアやプロモーションの比率が高く、交通広告や屋外広告などに特化しているわけではないので、ハウスエージェンシーとは異なる点かと思います。
総合広告会社としての仕事が中心ですが「TOKYU OOH」のメディアレップとして媒体を開発したり、東急グループが保有する様々な資産を活用したビジネス開発を行ってもいるため、グループ会社としての魅力的な部分も味わえる環境だと思います。
――同業他社や他業界も含めて、広告業界は今後どのように変わっていくと思いますか?
過去に比べるとやはりコンペティターが増えていますね。総合広告だけじゃなくてネット専業広告会社やコンサル、シンクタンクなども競合になっています。また、クライアント自身が「自分たちで戦略まで描けるから、あとはもうプロダクションさんと一緒に仕事するので広告会社はいいよ」とか、そういうことも起こりつつあります。この中でどう生き残っていくのかということを各社が模索しているのだと思います。
――本当に従来の「他業界」と競合するようになりましたね。
その中で、どうやって他社との差別化を図っていけるかを問われています。広義の意味のマーケティングにおいても、これまでのように調査をもとにした意識データだけではなく、デジタルツールの普及によって大量に収集可能になった購買や行動履歴といった生活者の行動データをもとに、戦略や施策のプランニングから実施、改善に至るプロセスに、どう食い込んでいくのかというのが広告会社として生き残っていくための一つのポイントだと思います。
――新時代に生き残るという観点で、デジタル改革は進んでいますか?
着々と進んでいます。デジタル領域のプランニングやディレクション機能を強化するのはもちろんのこと、当社独自のデータ分析ツールや広告・情報ソリューションの開発・運用し、それをもとにしたコンサルティング業務まで業務領域を拡大したり、東急グループ内の企業で協働した新規ビジネスの開発など、他の広告会社とは少し違った分野からのアプローチも進めています。
――もう少し突っ込んで、今後どういう風に変わっていきたいといったことはありますか?
正直なところ、これからの5年や10年先って簡単に予測できないですよね。その間に実験的な取り組みをいくつも進め、将来の事業基盤につながるものが生まれればいいかなと思っています。今は、そういった取り組みに失敗を恐れずに挑戦していくことが大切だと思います。いろいろなビジネスモデルがすぐに陳腐化していくほど環境の変化が速いので、実験して成功して、それで終わりではなくてそれを繰り返すのが大切です。弊社の宣言にあるような「実験、実践、実現。For Amazing Experiences」というスローガンが、事業を展開するうえでも大事ではないかと思っています。
――トライを重ねていくこれからがある中で、それらを担う人材はこれからどんな人を求めていますか?
ビジネスモデルが変わり今までのフォーマットで仕事がしにくくなる時代ですから、そこで生き残れるのは、変化を恐れないで新しいことにどんどん飛び込んでいける、その先でいろんな困難や軋轢があってもそれを乗り越えて成し遂げていけるような志向性の方と一緒に仕事ができればいいなと思います。あとは、広告会社の本質にあるのはアイデアなので、いろんなアイデアを生み出すためには多彩で多様な人材が必要と考えており、十人十色でいろんな方に来ていただきたいと思います。
――アイデア力は、クリエイティブやマーケティングといった職種でなくても大事になるとお考えですか?
はい、もちろんどの職種にも当てはまります。例えば人事の仕事でも、今までのやり方をずっと続けていたら環境の変化に合わなくなり成果もあがらなくなります。そういう時に自分なりの視点や独自のアイデアを実現できる人は、成果を生み出し続けられると思います。
――なるほどおっしゃる通り、「顔採用」などもアイデアですよね!
そうですね(笑)営業であってもクライアントとの関わりの中でアイデアを発揮するシーンもあるはずなので、自分なりの視点ややり方で考えて行動し常に成果を出せる人がいいと思います。
――ここだけの内緒で、採用担当のポイントをぜひお願いします!
例えば、面接や選考の場においても、言いたいことを言うのではなく、相手に自分のことをどう思ってもらうかということまで考えられるといいと思います。ただ、「○○をやってきて△△が出来ます」ということを伝えるだけでなく、相手に「この人といっしょに働きたいな」と思ってもらうためにはどうすればいいかと発想して、そこから逆算して考えられるということです。要は、相手や受け手の気持ちを考えるということですね。
なぜかというと、私たちの仕事もそうだからです。クライアントが何を考えているか常に考えますし、世の中の人がどう思っているかというのも考えます。基本はそれと同じです。面接官が何を考えていてそれをどう変えたいか、そのためのコミュニケーションはどうあるべきか考え、面接に挑める方はおのずと結果はついてくるのかなと思います。
――貴重なヒントをありがとうございます。選考プロセスを教えていただけますか?
2019卒では、エントリーシート提出からWEB適性検査、面接が計4回あります。1次面接は現場社員と2対2の面接で、2次面接は管理職2名との個人面接、3次面接は人事担当者で、役員面接が最後にあるというフローでした。
――最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします!
これからの就職活動というのは、これまでのやり方や先輩のやり方が通用しなくなったり、もっと良いやり方や新しいサービス、色々な方法が試せる時代になっていきます。そういう時こそ、自分の頭で考えて自分で行動することがすごく大切になります。他人の言っていることをそのまま受け売りにしたり信じたりするのではなく、自分の五感で見たものや感じたものや考えたことを大切にしながら、将来の自分がどうあるべきか、どうなっていたいかを考えて取り組めば、とても有益な就職活動になるのかと思います。その選択肢の中に東急エージェンシーという会社があれば嬉しいですし、そうやって自分の頭で感じたことや考えたことをぜひ直接伺いたいと思っています。
――仲野さん、ありがとうございました!