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ベンチャー企業には大企業とは異なる独自の魅力が存在します。例えば、個人の裁量権が大きく、昇進も早いなどといった点です。そのため、仕事にやりがいを見出したいという人にとってはベンチャー企業への就職は有力な選択肢の一つになります。
しかし、ベンチャー企業には優良企業とそうでない企業の差が大きいという問題があります。
今回は、優良なベンチャー企業を見極めるためのポイントを探りながら、より良い企業選びについて考えます。
ベンチャー企業の光と影
ベンチャー企業には、先進的な事業を行なっている会社や、今までありそうでなかった「かゆいところに手が届く」事業を展開している企業が多く、中には急成長している(もしくは期待できる)企業も存在します。
企業規模から、入社後早期に主要なプロジェクトのメンバーになれる場合も多く、事業内容への興味とも相まってワクワクするような魅力を感じる人も多いでしょう。
しかしながら、ベンチャー企業には、無理な経営・事業運営を行なったり、悪質なビジネスを展開している企業も残念ながら存在します。
魅力的な文言に誘われて入社してみたらブラック企業だった、劣悪な労働条件で働かされる要員にされてしまった、最悪の場合は悪質ビジネスや犯罪に加担するハメになってしまったという悲しい状況になってしまう可能性もないとは言えません。
だからこそ、危険なベンチャー企業にありがちな兆候を見逃さず、優良な企業を見極めることが大切です。
では早速、注目すべき危険な兆候について考えていきましょう。
ブラック企業の可能性が高い企業の特徴とは
まず最初に、ブラック企業にありがちな特徴を考えていきましょう。
質の悪いベンチャー企業の場合は入社してもすぐに倒産してしまったり、1年で90%以上が辞めていくブラック企業だったりするケースが少なくありません。
できれば、そういった企業は最初から回避したいものです。
そこで、まず、これだけは気を付けてほしいという、ブラックの可能性が高いベンチャー企業の特徴を5つ挙げていきます。
これらの特徴について、一つ一つ詳しくみていきましょう。
1. 大量採用をしている
1つ目は大量採用をしている企業です。
例えば、社員が300人程度の規模にも関わらず新卒の社員を100名雇用するといったケースです。
社員一人一人を大切に育てたいと考えている企業ならこのような大量雇用はまずありえません。
大量に採用しているということは大量の離職者を前提にしているという事実を意味します。
実際、こうした企業の場合、1年後にはほとんどの新入社員が会社を辞めています。
もちろん、新卒がすぐに辞めてしまうということは労働条件も劣悪であるということです。 目安としては、採用人数が全社員の1割を超えれば赤信号だと思っておいた方がよいでしょう。 300人規模の会社であれば30人以上で危険だというわけです。
ただし、事業拡大のために多くの人材が必要となって大量雇用を行うケースもあり、その場合は成長を見込める優良な企業ということになります。
したがって、就職を検討している企業に新規事業開拓の動きがあるかどうかをチェックしておくことも大切になってきます。
2. オフィシャルサイトに社員の顔が載っていない
要注意ポイントの2つ目は会社のオフィシャルサイトに社員の顔が載っていない企業です。
社員の入れ替わりの激しいベンチャー企業の場合、社員の写真を掲載してもすぐに辞めてしまうので頻繁に写真を差し替えなくてはならなくなります。しかし、いちいちそれを行うのはあまりにも手間です。そこで、体質がブラックのベンチャー企業は社員の写真を極力掲載しないようにし、どこにでもあるような素材写真で代用します。
逆に、社員の写真が多く掲載されている企業は離職率が低く、社員を大切にしている可能性が高いといえるでしょう。
ただし、中には社員が辞めてもそのまま同じ写真を使い続けている企業も存在するため、注意が必要です。
確認方法としては、もしそのサイトで名前も一緒に紹介されている場合はFacebookなどをチェックしてまだその企業に所属しているのかを調べるといった手があります。
3. 相談役や顧問が多い
3つ目の要注意ポイントは相談役や顧問の多い企業です。
そもそも、ベンチャー企業の持ち味はフットワークの軽さであり、そのために必要なのは臨機応変にプロジェクトをコントロールできる人材です。そういった意味では役割が明確でなく、意思決定の遅延を招きかねない相談役や顧問の存在は大きな足枷にもなりかねません。それにもかかわらず、企業の規模に対してそれらの役職が多いところは会社設立の際になんらかのしがらみがあった可能性が高いといえます。
その場合、そうした役職の人たちは特に働くでもなく、利益ばかり貪ることになります。
しかし、それだけならまだ良い方です。下手に口を出されて現場に混乱をきたすようになれば、ベンチャー企業としての持ち味は死んでしまうことになるのです。したがって、他の会社と比べて相談役や顧問が多いと感じたベンチャー企業への就職は慎重に行う必要があります。
4. 「夢」「やりがい」「成長」が謳い文句
4つ目は「夢」「やりがい」「成長」といった言葉を謳(うた)い文句にしている会社です。
会社説明会などでこのような言葉がやたらと出てくる企業は危険度が高いといえます。
確かに、夢や成長という言葉はこれから社会に出る学生にとっては心に響くものがあります。 しかし、それらの言葉を連呼する企業に限って、将来に対する具体的なビジョンがなく、現在手掛けている事業にも将来性がないというケースがほとんどです。要するに、中身のなさを抽象的な言葉でごまかしているわけです。
したがって、会社説明会などの際には、雰囲気に流されることなく、話の内容が中身のあるものなのかをしっかりチェックしていくことが重要になってきます。
5. 過去に不祥事を起こしてきている
5つ目の要注意ポイントは不祥事です。
インターネットで検索して過去に深刻な不祥事を起こしている企業は避けた方が無難です。
ただ、そういう企業に限って名前をコロコロと変えている場合があります。
そこで、まずは企業名の変遷について調べ、その上で、一つ一つの企業名に対して検索をかけてみることが大切です。
優良である可能性が高い企業の特徴とは
続いては、優良である可能性が高いベンチャー企業の特徴を考えていきましょう。
こちらも、特徴的なポイントは5つあります。
これらの特徴について、一つ一つ詳しくみていきましょう。
1. ベンチャーキャピタルからの投資を得ている
まず、1つ目がベンチャーキャピタルからの投資です。
ベンチャーキャピタルとはハイリターンを狙ってアグレッシブな投資を行う投資会社のことであり、そこから出資を受けているという事実は専門家に将来性があると太鼓判を押されたことを意味します。
もちろん、だからといって、その企業の成長を100%保証するものではありません。しかし、企業の将来性を測る上では有力な手掛かりとなります。
日本には政府系のベンチャーキャピタルを始めとして有力なベンチャーキャピタルが多くあるので、それらを中心に出資状況をチェックしてみればよいでしょう。
2. 補助金を受けている
2つ目のポイントは補助金を受けているかどうかです。
中小企業庁などでは産業発展を目的として将来有望な企業に補助金を出しています。つまり、補助金を受けられる企業であれば、今後成長していく可能性は高いといえます。
ただ、この際に注意が必要なのは補助金と助成金を混同しないことです。助成金は一定の条件さえ満たしていればどんな企業でも受け取ることができるので将来性の目安にはなりません。
また、どの企業が補助金の審査に通ったかについては各都道府県庁から発表されるので、それをチェックすれば確認することができます。
3. 企業への表彰等の受賞歴がある
ベンチャーキャピタルの投資や補助金と並んで見逃せないのが、3つ目のポイントとなる表彰受賞歴です。
企業のモチベーションを高めるために、優良な企業を表彰する制度が数多くあります。有名なところでは、中小企業庁の「はばたく中小企業300社」や経済産業省の「日本ベンチャー大賞」などが代表的です。
ちなみに、前者は革新的な製品開発やサービス創造、あるいは地域経済の活性化などに貢献した企業を対象としており、後者はインパクトのある新事業を創出した企業を対象としています。
他にもさまざまな賞があり、企業がどのような受賞歴があるかを調べることで会社の強みなどを推測することができるのです。
有名企業も過去にこれらの賞を受賞しているケースが多いため、将来性にこだわるのであれば一通りチェックをしておいた方がよいでしょう。
4. 業績が良い
4つ目のポイントは業績の良さです。
当然、この数字は企業の優良さを見極める上で極めて重要なウエイトを占めます。
ただし、これは単に数字が高ければよいというものではありません。より大切なのは伸び率です。伸び率が高ければ、それがそのまま将来性の高さの表れだといえます。
したがって、企業の業績を見る際には過去数年分の数字を集め、その推移に注目するようにしましょう。
5. 事務所移転経歴に成長が見られる
5つ目のポイントとしては事務所の移転履歴が挙げられます。移転したことがある場合、なぜ事務所を移転したのかに注目する必要があります。
仮に、最初は小さな事務所から始まって、次第に大きな事務所に移転を繰り返していたとしましょう。すると、これは 「事業拡大に伴って従業員を増やさなくてはならなくなり、そのために手狭になった事務所からさらに大きなところに移った」と推測することができます。
しかも、大きな事務所に引越すにはお金もかかりますし、家賃も高くなります。つまり、移転にかかるコストに見合うだけの業績の伸びを見込めるという自信の表れでもあるのです。
逆に、以前より小規模な事務所に移ったとなると業績不振で事業縮小を行っているおそれがあります。
採用選考時に注目すべきポイント
ベンチャー企業に関して、ブラック企業にありがちな特徴5つと、優良企業の指標となる特徴5つをご紹介してきました。
ここからは、更に採用選考の過程で優良企業を見極める助けとなるポイントをご紹介します。
確実性はやや下がるものの、是非確認しておきたいポイントを3つご紹介します。
それぞれのポイントを考えていきましょう。
1. 社長が先頭に立って情報公開をしているか
まず、社長が先頭に立って情報公開をしているかどうかは重要なポイントです。
優良なベンチャー企業は社長自ら積極的に発言をしている傾向があります。
もっとも、自信過剰で極端に強気な発言をしている場合は逆に注意が必要です。
同様に、自社サイトでの社長の挨拶もチェックすべきポイントとなります。
自信過剰すぎるのは困りものですが、熱意が伝わらないのも逆に心配です。本来、ベンチャー企業を立ち上げるときははち切れんばかりの情熱であふれているはずです。したがって、挨拶の内容に情熱が感じられればよいのですが、もしそうした熱意を感じられないようであればその会社は気を付けた方がよいかもしれません。
2. 社長が採用選考に積極的に関わっているか
社長の採用選考への関わり方も重要なポイントです。
ベンチャー企業にとって何より大切なのは人材です。
社長もそれを理解して、多忙な中でも時間を割いて自ら積極的に人材発掘に乗り出していることが感じられたら、採用者一人一人を大切にしようとする姿勢の表れだといえます。
具体的な判断材料としては、採用選考の際に社長と早い段階で話す機会があった会社は将来有望なベンチャー企業である可能性が高いといえます。
3. 職場の雰囲気は良いか
企業の良さ・悪さは職場の雰囲気に映し出されます。入社前に企業のオフィスを見る機会があった場合は職場の雰囲気も是非チェックしておきたいところです。
誰であれ、雰囲気の悪い職場では働きたくないものなので、それを確かめられるという点では大きな意味があります。
その際、怒号が飛び交っているとか、誰もしゃべらない陰鬱な職場だといった分かりやすい雰囲気だけでなく、細かいところまでチェックしておくことが大切です。
例えば、
「一見きれいなオフィスだけど会議スペースが汚れている」
「社員の服装がだらしない」
などといった部分です。
その結果、自分とは合わないなと感じれば、就職先の候補として外すのも一つの考えだといえるでしょう。
いくら給料などの条件が良くても、感性の合わない会社に入り、いつまでたっても職場の空気になじめないというのはよくある話だからです。
優良企業の見極めは自分の将来の見極め
今回は、ベンチャー企業が優良企業かを見極めるポイントを
・ブラック企業にありがちな特徴
・優良企業と判断できる指標となる特徴
・採用選考の過程でチェックしておくべきポイント
以上3つの側面から考えてみました。
改めて、重要なポイントを振り返ってみましょう。
ブラックの可能性が高いベンチャー企業
1. 大量採用
2. 社員の顔が載っていない公式HP
3. 人数が多い相談役・顧問
4. 抽象的で理想論的な謳い文句
5. 過去に不祥事
優良企業の可能性が高いベンチャー企業
1. ベンチャーキャピタルからの投資
2. 補助金の対象企業
3. 企業への表彰等の受賞歴あり
4. 良好な業績・順調な伸び率
5. 事業拡大が推測される事務所移転
採用選考時のチェックポイント
1. 社長の積極的で熱意ある情報公開
2. 社長の採用選考への積極性
3. 職場の雰囲気
ベンチャー企業が優良企業かどうか見分けるのは、なかなか難しいことだと思うかもしれません。しかし、企業の良い面が現れるポイントと、悪い面、つまりボロが出やすいポイントに注目していくと、気をつけるべき特徴が見えてくるはずです。
就職先となる企業が優良かどうかの見極めは、自分の将来の見極めにも通じます。
ぜひ積極的に企業について調べて、あなたに最適な就職先を見つけてください。