目次 [非表示]
「インターンシップ」
インターンシップ制度は、今や就職活動の上で重要な存在となりつつあります。
学生にとっては、実際に社会に出る前に仕事の現場や業界のしきたりなどに触れ、学ぶことができるチャンスです。
一方、企業側としても自社の知名度を高めつつ、将来有望な才能の持ち主を発掘し、確保できる可能性があると言う意味でおろそかにできないシステムであり、大きな期待を寄せています。
「ベンチャー企業でのインターンシップ」
このように学生、企業の双方にとってメリットのあるインターンシップ制度は、官庁や大企業ばかりでなく、ベンチャー企業にも導入されるようになってきました。
これは、学生側からすれば、自分の将来を形作る過程での大切なステップであり、力試しのための場を選ぶにあたって新たな選択肢が増えたことを意味します。
ベンチャー企業とは
「ベンチャー」とは英語で「冒険的な」を意味する”venture”で、ベンチャー企業はその名の通り、冒険的、あるいは革新的な事業や、その事業を行う企業です。
何事にも手堅い大企業がなかなか踏み切ることができない、創造的な仕事に取り組む新進の気概がベンチャー企業の魅力だと言えます。
ベンチャー企業は、社会が発展を続ける中、その折々で大きな役目を果たしてきました。
その足跡として記憶されているのが「ベンチャーブーム」です。
日本では1970年前後の第一次、1980年前半の第二次、1995年前後の第三次のベンチャーブームがあり、その都度新しい産業や、後の大企業が誕生しました。
外食産業の「すかいらーく」は第一次、旅行会社の「H.I.S」と通信事業の「ソフトバンク」は第二次、ITの「楽天」は第三次に登場しています。2018年現在も存在する大企業も、かつてはそれぞれの時代のベンチャー企業だったのです。
そして2013年からは、大企業が社外のベンチャー企業に対して投資を行うCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)により、第四次ベンチャーブームがスタートしました。シナジー効果を狙った、大企業の豊富なリソースを得て、新たなベンチャー企業の時代が到来しているのです。
貴重な機会
ベンチャー企業でのインターシップは、学生にとって大きな経験を積むことのできる貴重な機会となります。
大企業のインターシップでは感じられない空気や、働く上での手ごたえをリアルに感じることができるからです。
「大企業のインターンシップ」
メリット
大企業のインターンシップには、整った労働環境と福利厚生のもと、誰もが知る会社の内部を除くことができるチャンスでもあります。
有名な企業が実際にはどのような業務を行っているか、そこで働く人はどのようなスキルや意識を持っているかなどを知る機会は滅多にないものです。
また、教育体制が整っているため、右も左もわからない学生でも安心して仕事に取り組むことができます。
指導は丁寧確実で、学生に任せられる仕事は基本的な部分に限られているため、焦ることもありません。
就業規則がしっかりしているため、定刻を超えていつまでも働かされるといったこともなく、学生の本文である学業の妨げとならずに済みます。
デメリット
しかし、何事にも反面があるものです。
教育体制が整っているということは、逆に言えばマニュアル化されているということでもあります。
均質化、画一化は常に一定の効果を約束するものです。
しかし、インターンシップにおいては、それは決められた部分しか見せない、触れさせないという大きなマイナスポイントともなります。
仕事の範囲が限られているということも同様で、仕事上で周囲に迷惑をかけない配慮がされているというのは、それだけお客様扱いであるとも取れるものです。
実際に、現場で自分なりの意見を述べたとしても、なかなか受け入れてもらえない、取り上げられないということもあります。
また、融通の利かなさ、自由度の低さも大企業のインターンシップでは目立つものです。
例えば、学生がせっかく仕事に魅力ややりがいを感じ、もっと学びたい、より深く体験したいと考え、出勤日を増やしたいと望んでも対応が遅かったり、断られてしまったりすることも珍しくありません。
こうした問題点は、ひとえに大企業が持つ性質からくるものです。
組織が巨大になれば様々な部署が生まれ、それぞれの役割分担と関係が複雑化していきます。
仕事内容はさらにその部署ごとに細分化されるため、学生どころか正社員でも、仕事の全体像がつかみきれないという事態も起こり得るほどです。
マニュアル化された教育や、無難すぎて張り合いを感じにくいような仕事範囲も、この仕組み上仕方のないものと言えます。
管理体制も強化しなければ、社内の統制がとりにくくなりますし、社員一人一人の働きを正しく評価し、相応に報いることが難しくなってしまうのです。
しかしやはり、決められた範囲でしか動くことができないという縛りは仕事のルーチンワーク化に繋がり、やる気が失われる原因となりかねません。
毎日似たような作業を繰り返しているうちに、自分の存在が大企業という機械の小さな部品になったように感じられ、モチベーションを失くしてしまう可能性もあります。
インターンシップでは報酬も魅力の一つですが、大企業のインターンシップでは仕事が全体的に少なく、時間も限られているため報酬の総額は抑え目です。
交通費などの必要経費はもちろん出されるものの、アルバイトとそう変わるほどではないというのが大半となります。
「ベンチャー企業でのインターンシップのメリット」
実戦形式がメイン
一方で、ベンチャー企業のインターンシップに参加する場合、まず心得ておく必要があるのは、現場は常に即戦力を求めているということです。
そのため、学生の身分だからと暢気に構えることはできません。
挨拶の仕方から教えてほしいなどと言うレベルでは、仕事についていくことは難しくなります。
人材はもちろん、資金や体制などあらゆるリソースが不足気味であることが多いため、教育の基本は座学ではなく、実際の仕事を通じたOJT(On the Job Training)、実践形式であることが大半です。
少しでも力のある人であれば、どんどん仕事を任される場合もでてきます。
そうなると自然とシフトは増え、気が付けば仕事に夢中になるというケースも珍しくありません。
中には、とうとう単位を落としてしまったという、本末転倒な結果になる人もいます。
また、仕事を任されるといっても、自分のしたい仕事や得意な仕事だけやるというわけにはいきません。
人手が足りないという理由で便利に使われ、口下手なのに営業に回されてしまったり、開発に参加したいのに事務の手伝いをさせられたりということもあるのです。
しかし、あえてベンチャー企業のインターンシップに飛び込む気概のある人にとっては、こうした経験も自分を育てる材料となります。
座学よりも実践の方が成長が早いのは確かですし、身に付ける知識や技術が実際的であるため、就職後により有効なものとなるのです。
ビジネスを肌身で感じらえる
さらに、将来はどのような仕事をしたい、いずれは起業したいという具体的な計画があるなら、ビジネスと言うものを肌身で感じることができ、全体像を掴みやすい規模であるベンチャー企業は理想的なモデルになります。
即戦力として期待するわけなので、意見にも耳を傾けてもらうことができ、実際の商品や企画に採用される、ということも珍しくありません。
既存にないものを作り上げていく企業では、当然マニュアルはありませんし、こうしなければならないというルールも出来上がっていないので自由度が高いのです。
より良いものを仕上げるためにはできるだけ多くの意見が出ることが望ましく、社員、インターンの別は問われません。
報酬が高い
その分報酬は高く設定され、インセンティブなどの制度を用意しているところもあります。
1週間のうち5日働くフルコミットを提示されるケースも目立ち、場合によってはほぼ正社員並みの稼ぎを上げることも可能です。
そのためインターン中に経験を積んで資金を作り、卒業と同時に起業するという夢も、あながち非現実的なものとは言えません。
経営陣と近い
ベンチャー企業の大半は社員が数十人までの小規模であり、経営陣が現場に顔を出すこともよくあります。
これは、大企業のインターンシップではまずあり得ない体験です。
ベンチャー企業の性質上、経営者は独自の発想と先進的な姿勢を持つ人が多く、話を聞くだけでも大きな勉強になります。
経営者としての視点を学ぶまたとない機会であり、仕事終わりに食事に連れて行ってもらうなど、その人柄にじかに触れつつ知識を吸収する、という経験ができるのは、ベンチャー企業ならではです。
人脈づくりができる
ベンチャー企業のインターンシップでもう一つ見逃せない点として、人脈作りができるというものが挙げられます。
将来に起業を考える人はもちろん、いずれはフリーランスでの仕事を目指す人にとって、人脈は何よりも大切な宝物です。
顔も知らない相手に、仕事を回そうという人はそうはいません。
人脈が無ければ、一人立ちしたはいいものの、仕事がなく全く立ち行かなくなってしまった、という事態に陥ってしまいます。
希望の業界での人脈を作り上げる意味でも、現場で正社員並みに働くことができるベンチャー企業でのインターンシップは大きな役割を果たすのです。
「今後の社会人に必要な能力」
経済産業省は2006年から「社会人基礎力」という概念を打ち出しました。
日本で伝統的に行われてきた終身雇用制が崩れた現代では、環境の変化に対応できる、社会人としての基礎的なスキルがより重視されるようになったためです。
経済産業省はそのスキルを「前に踏み出す力(アクション)」、「考え抜く力(シンキング」、「チームで働く力(チームワーク)」の3つだとしています。
つまり、物事に積極的に取り組む主体性と行動力に、現状を分析し、新しい価値を生み出せる創造力を併せ持ち、柔軟性を以って協力し合うことができるチームワークを発揮できる人物こそが、理想的なビジネスパーソンだということです。
自ら積極的に動き、即戦力の一人としてアイディアを提供し、チームで創造を行うベンチャー企業でのインターンシップには、この3つの力を培い、自分のものとするための条件がそろっています。
一線で通用するビジネスパーソンとして自分をブラッシュアップしたいと思うなら、ベンチャー企業でのインターンシップに参加することは決して無駄になるものではありません。
自分の能力を測り、足りないものや強みを見つけ出して、将来のために役立ててください。