インタビュー 2015.10.01
【社会人インタビュー】博報堂 須田和博さん「広告志望の学生が伸ばすべき大切な能力は1つだけ」

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    こんにちは。シンアドインターン、東洋大学ライフデザイン学部の友成美由紀です。
    今回は株式会社博報堂iディレクション局 シニアクリエイティブディレクター須田和博さんへインタビューをおこないました!

     

     

    須田和博さんプロフィール

    1990年多摩美術大学GD科卒業。アートディレクター、CMプラナーを経て、インタラクティブ領域へ。2014年3月自主開発型クリエイティブ・ラボ「スダラボ※」発足。 紙~CM~WEBの全てがわかるCDとしてメディアを問わずコンテンツからサービスまで企画制作。1985年ぴあフィルムフェスティバル、1999年ACC賞、2000年TCC新人賞、2007年モバイル広告大賞、2009年東京インタラクティブ・アド・アワード・グランプリ、カンヌ国際広告祭メディアライオン・ブロンズ。2009年アジア太平洋広告祭・サイバー部門審査員。2014年ACC賞インタラクティブ部門・初代審査員。2014年スダラボ第1弾「ライスコード」が、カンヌ、アドフェスト、アドスター、スパイクスなど世界の広告賞でグランプリ、ゴールドなど合計60以上の賞を得る。

    主な仕事に、ロッテ・カフカ「泣きやみ動画」、NTTドコモ各種WEB施策、大塚製薬・ポカリスエットなど。著書に「使ってもらえる広告」(アスキー新書)がある。

     

    須田和博氏 紹介ページ(博報堂サイト)

     


    ※「スダラボ」とは?
    2014年3月7日より、デジタル領域・ダイレクト領域などに強みを持つ社内クリエイターが中心となり、次世代型クリエイティブを開発する社内横断プロジェクト「スダラボ」を発足。博報堂のクリエイターが持つ発想力等のスキルと、これまで培ってきた社内外のネットワークを活かし、先進的なアイデアを形にする自主開発業務を中心に行い、開発した案件を様々な企業・社会に提案していく、という新しい形を模索。

    http://suda-lab.jp/

     

     

     

    広告志望の学生が伸ばすべき「大切な能力」とは

     

     

    ――広告志望の学生が伸ばすべき大切な能力は何かありますか?

    「仮説構築力」だけですね。
    僕らの仕事は、仮説をメディアのメニューにくっつけて広告主に売るだけなので。

    仮説って何か?というと、「こうしたら上手くいくよ」という仮説ですね。つまり、誰も未来のことはわからないから、全部「こうなるはず」としか言いようがない。「絶対上手くいきます」っていうことが本当にあるとしたら、どんな広告主も上手くいくけど、実際は実施してみなければわからない。だから「こうしたらうまく行くはずです」「なぜならこういう現象があるからです」というように、実際に上手くいっている物事から原理を抽出して、それを活用すれば、「こういうプランニングで上手くいくはずです」と提案することができる。
    アイデアと呼ばれているものは、要は「こういうこと」なんです。

    こういう仮説を作れる人は広告に向いているし、仮説が作れない人は残念ながら広告には向いていない。
    だって、広告会社では、クリエイティブ職やマーケティング職だけでなく、どの職種でも仮説を作りますから。
    クリエイターだったら、コンテを描きました、コピーを書きました、じゃ全然だめで、「○○だからこういうCMが良いんです」と仮説を立てる。マーケティング職は、「こういう理由でこういうコトがおきて、こうヒトが動いて売れる」という仮説を立てる。これに尽きますね。

    こうやって独自な仮説を、説得力を持って立てられる人は広告に向いている。
    たとえそれが、どんな無茶な仮説でもいい。むしろ無茶な仮説の方が、価値が高い。そして、その仮説を魅力的に語れる人が向いています。仮説を魅力的に語れないとダメです。この業界は好むと好まざるとにかかわらず、しゃべりで仕事をすることが多いので、その仮説の話を聞いた時に、「なんか上手くいきそうだな」と思ってもらえる人は広告の仕事に向いている。「なんだか上手くいかなそうだな」と感じられてしまうと、たとえそれがいかに良い仮説でも通らない。実際、それでソンしている人もいっぱいいる。これは、イコール「プレゼン能力」だから、広告の仕事そのもの。プレゼン能力が低いということは、やはり広告の仕事に向かない。

    こうしたらこう上手くいくよ、こうしたらお客さんが来るよっていう仮説を、独自の論理で構築できる人は広告に向いています。しかも、それを「上手くいきそう」に話せる人は、さらに向いてます。

     

    ――なるほど!今の須田さんのお話、ご自身ですべて絵に描いて説明してくださいましたが、絵で表すと非常にわかりやすいですね!

    そうですね。わかりやすいというのは、広告の仕事では非常に重要なことですね。
    僕は、打ち合わせのときは、必ず絵を描きます。
    描くことで共通認識がズレないし、記憶もプレイバックしやすくなる。
    重要なキーワードも全部、必ず自分で書き留めています。こうやって書かないと、いま話していることも、全部忘れちゃうからです。しゃべっただけのものは、すべて消える。
    自分で書き留めたものだけが、残ります。講演やセミナーや会社説明会でも同じことです。

    よく「ドキュメントは、あとでもらえるんですか?」と訊くヒトがいますが、ドキュメントそのものと自分がそこで知ったこと・気づいたことは別物です。
    自分が知ったこと・気づいたことは、自分で書き留めなければ、誰も残してはくれません。だから僕は、いつでもどこでも、ひたすらメモを取っています。
    「そんなに書いて、どうするんですか?あとで見るんですか?」と訊かれることもありますが、あとで見るかどうかは、どうでもいい。

    僕はノートや板書などのメモは「脳のモニター」だと思っています。コンピューターと同じで、基盤の中で起きていることはブラックボックス。
    何を考えているか? 自分でもホントはわかっていない。いま考えていることを、いま目の前で見えるようにしないと、人間は「考えごと」を対象化して扱えないんですね。だから、常に書く。字と絵で。コンピューターにモニターがなかったら、どうしょうもないのと同じです。
    広告を目指す人は、散文的にメモをとるんじゃなくて、聞いたこと、気づいたことを「短い言葉と絵」で書く訓練をすると良いと思いますよ。それって要するに、広告の企画の基本そのものだから。

    あと、僕は、会議室にはホワイトボードが絶対に必要だと思っています。CDである僕がホワイトボードに議事録を書くんだけど、「なんでCDが書記やってるの?」ってよく不憫に思われる。
    でもCDが書記をやった方が絶対に良いと思うんですよね。なぜかって言うと、ホワイトボードを書くこと自体で、皆からのアイデアのチョイスもそこできるし、バラバラのアイデアを関係づけて線でつなぐこともできるし、アイデアの核となる最重要ポイントにマーキングもできるから。

    これを打ち合せをしながら、リアルタイムで同時におこなえる。しかも、皆が同じボードを見つめながら会議に参加するから、同じ思考に集中できる。相乗効果が発生して、よりアイデアも出やすくなる。

    僕は、みんなが会議の時に喋ったことを、ひたすらホワイトボードに書いて、その場で構造化して、スマホで写真撮って、画処理して見やすいPDFにして、要点を赤字で加筆タイプして、わかりやすくして、スタッフみんなにメールで送る。それが日常的な「打ち合せ」での、自分の仕事のすべて。でも広告の仕事だけでなく、編集業界であれサービス開発であれ、どんな仕事の打ち合わせでも、こういったことは絶対にやった方が良いと思う。

    自分の実感としては、そうやって書かなかったら、話し合っていた内容は何もかもすべて消えて、忘れられてしまう。
    それで後日ミーティングで集まって、誰かが宿題と違うことをやってきても、書いて共有したものが残ってなかったら、誰も正しいかどうかわからない。言った・言わないの、不毛な状態になる。「僕はこう言ったはずです」「私はこう聞きました」だと、本来ダメ出しのしようがないんです。だから必ず板書に書く。しかも、それを僕は文字の箇条書きじゃなくて、吹き出しとか関係線で書く。ただの字だと、誰も読まないんだよね。読む気がわかない。図解するとポイントがすぐわかって、頭の負担が減って、理解しやすくなって、考えやすくなる。そう!マンガが、議事録の一番理想的なカタチですね。

    僕らのような映像やモノを作る仕事だと、言葉でメモっても、あいまいな部分が多すぎて、思ったものと容易にズレる。だから、その場で、絵を描いて認識を合わせる。これはデザイナーなら誰でもやる当たり前のこと。なぜなら、ビジュアルやレイアウトというモノは、字では説明しようのないモノだから。僕はデザイナーとして博報堂に入社したので「絵でメモを取るのは当たり前だ」という認識がある。その場で、わかるように描けなかったら打ち合せにもならないし。そうやって育ったから、いまもその手癖が抜けなくて、そういう板書を自然にやっているのかも、しれませんね。

     

    就活の自己分析でも使える! イラストレーション・シンキング

     

    これは、就活の自己分析などでも同じ。ぐだぐだ書くのでなく「短い言葉」にして、そのキーワード同士の関係を線でつないで、図に表していくとわかりやすい。これを保存しておけば、考えた後、安心して忘れられるし、必要に応じて、すぐ思い出せる。
    これはイラストレーション・シンキングとでもいうべきもので、考えたことを図や「絵と言葉のセット」で表すと、時間がたってからでも、考えたことが2秒で再認識できるんですよ。会社説明会に行ったときにも「絵と短い言葉」とか図でメモを書くとわかりやすいですよ。大学の授業もそう。下手でも試しにやてみれば良いんです。こんなの慣れです。落書きみたいで、楽しいですよ。

    ――図式化するとそのような効果があるのですね!慣れるまでが大変そうですが、結果的に効率良くなれそうです。
    さて、去年のインタビューで「仮説をたてるためには観察力が大事」とおっしゃっていたのですが、その観察力とは、人に限らず物とか街とか身の回りのものすべてに対するものなのでしょうか?

     

    そうですね。お母さんがターゲットならお母さんを観察するし、脳内メーカーが流行っていたら、脳内メーカーを使っている人はなんでそれを使って喜んでいるのかを観察する。このイベントになんでこんなに人が集まっているのかなとか。仮説構築力と観察力は切っても切れない。同じくらい大事です。どんな仕事でもそうだと思う。

     

     

    座がわくか、わかないか。ウケっていうのは正直だから、すぐわかる

     

    ――その仮説の当たりはずれは、どこでわかるのですか?

    「マイ法則・マイ仮説」があって、それでわかります。
    「マイ法則・マイ仮説」とは、ひたすらターゲットを観察して、仮説をたてて、それを元に、企画を考えること。
    世の中の現象を観察して「ヒットの法則」を抽出し、それを使って「マイ仮説」を立てる。その仮説が、すなわち企画ですね。で次に、その企画に対して「本当にそれやるかね?」「本当にそれでお客さん動くかね?」って、冷たく突き放してみるんです。この繰り返しですね。「これは絶対にウケるはず!」という熱さと、「そんなの実際にやんないよね」っていうシラケた態度の「繰り返し」が大事。こうやって「アイデアをまず広げて、それから絞る」ことを繰り返し続けることで、仮説の当たりハズレがだんだんわかるようになるんです。
    これは、学生のビジコンにおいても同じことだと思います。

     

    ――ビジコンに出ている学生はこの「アイデアを広げて絞る」の繰り返し作業ができていないですよね
     

    そうなんですよ。大して広めもしないで一案目でこれだ!って言って進めちゃうのが学生。一人で100案出して、突き放して捨てて、また100案考えて、一日置いても、やっぱりこれで大丈夫!って思う案じゃないと。
    広げる前に案を決めちゃっているのが学生の甘いところです。そうなっちゃうのは、限界まで広げる体験をしていないからだと思います。まずは100案出して、また100案出して、さらに100案出して「もう出ません・・・」ってなると、脳が変わる。

    あとは、100案だして、うちわのメンバーが「良いね」と言うんじゃなくて、関係ない人に説明してみると良いですよ。それで「??」ってなられたらこの案はダメだってことがわかる。どうしたら通じるのかっていうことが、実感でわかりますし。温情のない人に聞いてみると、さらにわかりやすい。


    ――須田さんは、どのようにしてそのような手法を学んだのですか?
     

    僕が多摩美にいた頃、ある授業で、どうとでもとれる非常にザックリしたテーマが、課題として年間で10個出されて、そのテーマの中から自由に選んで何でもいいから何か企画してプレゼンしろ!っていう授業があったんです。クラスメイトの40名が、みんなこの授業が苦手だった。何をやれば良いのか、わからなかったから。

    でも、考えたアイデアをプレゼンすれば良いから、僕は好きだったんですね。だから2週間に1回くらい、アイデアを形にして持ってて、その授業で発表した。その中で、相当面白いと思って作って来たのに、クラスメイトに全然伝わらない・・・とか、まったくかすりもしないとか、ひねりすぎてわかってもらえなかったとか、逆に、こんなネタでこんなに大ウケするんだとか、身をもって体験した。これを繰り返しやり続けたら、そのうち「コレは滑るな」とか「コレはウケるな」というのが、次第にわかるようになった。

    アンケートだとみんなきれいごとを書くけど、ウケっていうのは正直だから、座がわくかわかないかは、その場ですぐわかる。こうやって板場に立つことで、自分が客にさらされる体験をしたので、客観的な感覚が身についた。あの授業は身になりましたね。クラスメイトといっても客だから。観客は悪気なくシラーっとするからね。

    ――そのときはどういった気持ちなのですか?

     

    次がんばろうって思う。ネタ出しして、プレゼンに立ってこそ、なので。芸人と一緒で、実力がつくのは、客に磨かれてこそです。それでガッカリするもよし、ガッツポーズするもよし! セミナーとか講演も一緒ですよ。やればやるほど、客に磨かれる。一席やった後で「何か質問ある?」と訊いて、講演がわかりやすくて面白いと思われてれば質問があるし、何もなかったら「わかってもらえなかったんだな」、僕はまだこの程度かって思う。

    インタラクティブの世界は、まさにこういう感じなんです。ネットでネタを公開してビュー数が上がるか上がらないかだけだから。リアルな世界。数字で表されるから、どんなに「いけるはずだ!」と思っても数字が伸びなければダメなんです。そうなりそうな事態を事前に阻止できなかった時ほど、ダメだ!って思うことはないし、口惜しさがすごい。

    ――今でもそういう口惜しさを感じますか?

     

    もちろん。企画がズレてた時は100%自分が悪いから、どうしょうもないけど、いい企画なのにプロセスで暴走して「ソコやっちゃダメ」って、わかってたのにストップできなかった時とかね。凹みますね。あと、ユーザーはシンプルなものを求めているのに、企画者や作り手が張り切っちゃって、やりすぎちゃった時とか。そこじゃないんだよねって思う。難しいですよ。生涯、勉強です。

     

    スダラボで一番心がけているのは、居心地です。

     

    ――チームで動く際に、思い通りにいかないこともあると思いますが、スダラボでチームを引っ張るうえで意識していることは何かありますか?

    僕は、リーダーシップとは真逆なことをやっています。フォロワーシップというか、メンバーサポートというか。

    スダラボで一番心がけているのは、居心地です。
    つまり、スダラボの活動は自主なので、そもそも義務は全くなくて、実はやってもやらなくても良い。それでも、「やりたくなる」ようにしないと、どうにもならない。

    あと、スダラボを実践して気づいた重要なことは、定例会を設ける、つまり「集まる時間を決める」ってことがいかに大切かということですね。スダラボは出席率が高く、いつの間にかフェードアウトしてしまう子も1人もいないんです。
    7人それぞれ職種が違うので、誰が欠けてもダメっていう、ぎりぎりミニマムな構成だからでもあるし「これは俺がやらなきゃ破綻じゃん!」っていう責任感も生まれる。
    でも、出張に行ったらお土産にお菓子を買ってきたり、一週間に一度、定例会に来ると新しい発見があるとか、やりがいのあるTO DOがあるとか、一人じゃなくて助け合うことでギリギリなんとかなって、そのおかげで賞を獲ったり成果も出るとか、スダラボに行くと楽しいっていうのをなるべく維持している。

    一般的に、自主プロジェクトというものは、大体なんの成果も出ないうちに、いつの間にか自然消滅というケースが多いけど、それにはいくつか理由があるんですよね。お金がない、他でもできる、仕事が忙しい、自主なのに楽しくない、とかね。

    お金がないっていうのは、スダラボでも同じなんです。多くの自主プロジェクトは、アイデアは出たけど「お金がないからできない」って言って、そのまま終了っていうパターンが多い。
    そこで僕は、「お金がないとできないようなことは考えなければ良い」と言いたい。ないなら、ないなりにできることを考えれば良い!って。
    「お金がなくても、何だったらできるのかな?」って考えないと結局、何もできない。当たり前ですよね。本来、やりたいって思っている子たちが集まっているんだから「これならできるかも!」ってことを考えるのが、やるべきこと、出すべきアイデア。ヒトから与えられたミッションじゃないんだから、自分らで何とかするしかない。

    CMの発注がきて、制作費が決まっていて、プロダクションも決まっていて、決まった予算の中で決まったコンテを映像にするっていうCM制作の現場から、僕は10年前に出てきた。
    インタラクティブに来たら、とっても面白くて、ユーザーから直に反応が来ることに驚いた。ビュー数が伸びる時も、不発な時もあるんだというのもすごく新鮮で、とっても良いなと思った。
    CMは規模が大きくて良いところももちろんあるけど、インタラクティブは自分の性に合った。今は開発もやっていて、技術はないけどアイデアは同じだから、自分でできることをやっている。そこでもやっぱり「できないこと」は考えない。

    できることは、やっていくうちに増えていくから。最初はお金も技術もないけど、一個目が上手くいったら協力者が現れて、ちょっとずつできることが増えていって、また協力者が現れる。
    学生だって最初の友達から友達を紹介してもらって、自分ができないことができる子が現れてって同じだよね。映像が作れる友達ができたり、音楽できる子が現れたりして、どんどんできることが増えいく。そこで友達が増えなかったら、何も変わらない。
    決まった課題、決まった提出先、同じような案。そういうのが嫌なら、とにかく違う領域にいくとか、違う仲間を探すとかしない限り、現状は変わらない。

    ――現状に何をもたらして変化を起こすかってことでしょうか?

    うーん、でも突き放して冷静に見ると、僕は現状をあまり変えようともしていないかも。

    自分が今いる所が飽和して沈み始めてて「つまらないな」と思ったとして、見回して「あっちは空地だらけじゃん」ってのが、もし見えたら「じゃそっちに行ってみよう!」っていう方法をやってるだけかも。
    沈みかけている島に居続けるより、まだ誰にも見つけられていない大陸に行った方が、やれることはいっぱいある。

    大変だけど。就活もそうだと思いますよ。そんな企業聞いたことないし三流っぽいと、いまは思うかもしれないけど、10年前15年前はAmazonもgoogleも、そんなに知名度はなかった。
    自分の仮説で、成長性があると思えるところと、みんなが殺到する満員電車に強引に乗り込むのと、どっちが良い? というような話だよね。
    まあ、育ててくれた親を安心させるのも、大事なことですけどね。でも、5年10年先って本当にわからないから。だから、またここでも、自分の仮説こそが大事になるんですよね。

    そんなキレイゴト言っても、僕がズルいのは、会社を辞めずに会社の中で「転職」をやってることですよね。
    博報堂を辞めないで、業界の中で空地っぽいところが発生していたら、博報堂の中ですばやくそこに参入する。収入が安定した上でそういうことができるワケです。僕がもしフリーになったら「自分のお金を稼ぐ」っていうことにとらわれて、心配ゴトばかり増えて、良いアイデアを考えるどころではなくなっちゃうと思います。

    また、博報堂の多様な人材やネットワークを駆使しまくって新領域に参入してるので、フリーになったらこれも、出来ないかもしれない。そう! 要は、会社って使いようなんですよ。会社を上手く使う方が、会社も喜ぶんですよね。だから、もし「なんだかなー」という会社に入ったとしても、ただグチるんじゃなく「その会社をどう使うか?」を考えて行動することで、先々の展開は変わると思いますよ。

    ――単に大企業というだけではなく、自分の目で見て考えて企業を選ぶことが重要ですね。

    そうですね。ネットに「いい」と書いてあったからという理由で選んで、後になって自分に合わなかった…だと、どうしようもないからね。

     

     

    -須田さんの就活-僕は2社しか受けてないけど、勝負に出るときは本気だった。


    ――そんな須田さんの就活について教えてください。

    僕は2社しか受けてないけど、勝負に出るときは本気でした。
    受けに行くなら時間を無駄にしたくないから、プライドとして「絶対に勝つ」と決めて頑張っていた。わざわざ受けに行くのに、それで負けたのでは時間がもったいない。今でもそう思っていて、競合プレゼンに参加するときも、同じ思いで仕事をしています。参戦するなら勝つ。負けるくらいなら、やらずに休む。

    就活も「どうやったら勝てるかな?」っていうのを、本気で考えていかないと時間がもったいない。みんなと一緒に「なんとなく受けにいく」だったら、やらないほうが良いよ。
    勝つぞっていう思いは、汚いやり方を意味するんじゃなくて、その会社が「求めていること」に対して、自分がそれに答えられるということを「どれだけわかりやすくプレゼンできるか」だと思う。頭4つ分くらい抜けているようにしなきゃ、到底、勝てないと思う。

    でも仕事は、勤めてからが「本当の勝負」ですよね。
    就活が終わったら終わりじゃなくて、その後も「楽しく勝負しつづける」ことが大事。苦しく勝負すると、どっかしらで限界が来て、体を壊したりする。
    だから、好きなコト、自分に向いてるコトを仕事にしないと、先々、生きているのが苦しくなりますよ。その相性こそが、実は一番重要かもしれない。業種、仕事内容、会社との相性。これは、運と縁も大きいけど、ネットの情報で判断するんじゃなく、出かけて行って、その場の空気とか、そこに集まってるヒトのフィールとか、そういうもので「直感的な判断」をするのも重要だと思う。

    僕は「予感というモノには理由がある」と思っています。嫌な予感がする時は、なんらかの理由が必ずある。
    その理由を知るのが大事。論理的な判断ならここを選択すべきはずだが、直感がノーと言っている。そのフィールを曇りなくデリケートに感じられるように体調を整えて、かつ疑心暗鬼ではなく、「なぜ嫌な予感がするのか?」の原因を探っていくこと。企画の当たりハズレが事前にわかるのと、会社と自分との相性を事前に察知するのとは、同じことだと思います。

     


    ――須田さんも楽しみながら仕事しているのですか?

    仕事が嫌だなと思ったことは、ほとんどないです。仕事が多いなとは思うけど、面白く楽しくやることが多いかな。嫌だなと思うのは仕事内容じゃなくて、大概が人間関係ですよね。人間は「嫌だな」と思うと、出来るコトも出来なくなる。だから、なるべく「そう思わない」ようにしたり、その予感がする時は近づかないようにしてます(笑)。

    僕は社内で10年前、WEBという新しい領域に移動してきて、その領域のスキルが何もない時に、今までやってきたデザイナー職やCMプラナー職のスキルで何とかするしかないと考えた。
    皆さんも卒業して就職したばかりの時は、社会人スキルが何もないゼロから始まりますよね。僕もCM界からWEB界に来たときは、何もできなかった。WEBのことは何もできなかったから、絵コンテが書けますとか、セリフが作れますとか、歌が書けますとか、写真撮影のディレクションができますとか、そういった前の職種のスキルで何とかするしかなかった。どうやったら前の領域のスキルを、新領域に対して駆使できるか?考えつづけた。そうやって何とかした。皆さんが会社に入る時も、自分の学生時代の「何のスキル」を駆使したら重宝がられて、頼りにしてくれるのかな・・・と探って行くと良いと思います。

    やりたい仕事をやれるようになるために、大事なコツをひとつだけお教えします。それは「仕事というのは、誰かに頼んでもらわなければ、絶対に出来ないモノだ」という原理をベースにした考え方です。つまり、「自分が何をやりたいか?」を考えるのではなく、「自分が何を頼んでもらいたいか?」を考える。そのためには、何をしたらいいか考えて準備する。自分はこういうコトができる、自分はこういうことが得意である、自分はこの領域では実績がある、そういうコトを頼んでくれそうな人に、知ってもらえるようにする。こう考えて準備しつづけると、そう遠くない内に、きっと自分のやりたい仕事を「頼んでもらえる」ようになります。覚えておいてください。


    また万が一、勤めた先で「こんなの私がやりたいことじゃなかった」と絶望しても、3年くらいは我慢して仕事を覚えること。7年たって仕事も覚えて、それでも「嫌だな」と思い続けてるようだったら転職した方が良いけど、3年未満で辞めちゃうと「仕事の本質」もわからなくて、まだ何のスキルも身に付いてないですよね。せっかく就職したなら、仕事を覚えてから辞める方が良い。そうじゃないと、次のところへも行けないです。中途半端で辞めると、本当にどこにも行けなくなってしまう。「3年は続ける、7年たったら続けなくていい」なんとなく覚えておいてください。いつか思い出した時、きっと役に立つおまじないです(笑)。

    ――就活の話だけでなく、就活の先のことを踏まえながら教えてくださって、非常にリアルなお話ばかりでした。須田さん、本当にありがとうございました!



     

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