就活/企業調査 2018.11.21
【就活ルール廃止が就活生に与える影響とは?】新卒採用のこれから

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    就活ルール廃止

    経団連の中西宏明会長が、企業の採用活動の時期について定めた「就活ルール」の廃止に言及し、話題を集めています。

    仮に就活ルールが廃止された場合、これまで当たり前だった新卒一括採用の形式がとられなくなり、企業の必要に応じて流動的な採用を行うことが見込まれるので、就活生の動向や雇用のあり方に大きな変化がもたらされます

     

    とりわけ、経団連に加盟する企業は日本経済の中心を担う大企業ばかりなので、その影響は個別の企業や社員だけでなく、日本社会全体に及ぶことが見込まれます。

     

    就活ルールとは

    そもそも就活ルールとは、日本に特有の雇用慣行に位置づけられた制度です

    日本企業は、古くから年功賃金・終身雇用を軸として、社員が同じ会社に長く勤め続けることを想定してきました。

    年功賃金は勤続年数や会社への貢献度を人事査定の基準として賃金に反映する慣行です。

    実は、ヨーロッパでは年功賃金のような人事査定の方法はとられていません。

    「職務の内容」ではなく「職務につく人」が評価の対象となるのは、日本に独特な賃金制度です。

     

    「職務につく人」を評価の対象にするというのは、たとえば、営業などで好成績をあげた場合は賃金がアップすることのほか、結婚して家族を養うことになった場合や会社のローンでマイホームを購入することになった場合も、これまで以上に一生懸命に働くことが想定されるため、賃金が引き上げられるといったことです。

     

    日本ではこのような年功賃金の慣行を通じて会社が社員の生活を保障しており、それとセットになる形の終身雇用によって長期的に社員が会社に貢献することが想定されていました

     

    日本型雇用

    当初、日本型雇用は安定的な雇用によって社員の生活を支えると同時に、日本の技術力と組み合わさって革新的な技術開発を繰り広げ、高度経済成長を生み出しました

    車やカラーテレビといった、今では当たり前のように日常生活で使われる耐久消費財が生み出されたのもこの時代です。

     

    日本型雇用のもとで作り出された高度経済成長期に、現在の私たちの生活の基礎となる体系が形成されたといえます。

    日本中が好景気に沸いたバブル期は、右肩上がりに経済は成長し、戦後の復興期から完全に復活を遂げたかに見えました。

     

    日本型雇用の転換

    しかし、70年代から80年代にかけて世界が不況に見舞われると、このような日本型雇用のあり方は転換を迫られます

    1985年のプラザ合意で円高ドル安の状態が発生すると、それまで輸出を中心にしていた日本の工業は利益が減ってしまうので、輸出ではなく海外に進出して工場を経営し、現地で生産を行うスタイルに切り替えることになりました。

     

    これが、日本における多国籍企業のはじまりです

    多国籍企業は世界の情勢に応じて臨機応変に経営のあり方を変える必要があるので、これまでのように社員の長期雇用を前提とする日本型雇用は企業の目論見にそぐわないものになりました。

     

    また、国内の中小企業の多くは経済構造の変化についていけずに倒産していき、産業の空洞化が生じます。

    それと同時に、この時期からパートや派遣社員といった、長期雇用ではない臨時的な雇用のあり方が急増するのです。

     

    国内企業は、90年代には人員削減やリストラによって急場を凌ぎますが、こうした経営のあり方も再びの危機に直面します。

    2000年代後半はアメリカのリーマン・ショックをはじめとした世界的な不況に見舞われ、日本では派遣切りが大きな社会問題となります。

    この期間が就活生にとって苦しい時期であったことは記憶に新しいでしょう。

     

    景気の悪化によって企業の側も新卒社員をなかなか雇えなくなり、若者の雇用が危機的状況に陥ったのです。

    いわゆる「フリーター」と呼ばれる若者はこの時期に急増します。

    フリーターと聞くと、「自由気ままなライフスタイルを選んでいる若者」というイメージが強いかもしれませんが、フリーターの増加は世界的な経済状況の悪化と密接に関連していたのです。

     

    終身雇用という慣行の激減

    さて、このような激動を経た現在、従来の日本型のような年功賃金・終身雇用の慣行は激減し、同じ会社に定年まで勤めるという人生設計はなかなか成立しづらくなりました

    大卒で就職した人も、30歳前後で転職を経験することが一般的になっています。

     

    とはいえ、新卒一括採用という日本型雇用の風習まではなくなっていません。

    むしろ、大学生は1年生のうちから卒業の進路を意識し、インターンシップに足繁く通うなど、新卒採用を想定した就職への圧力は昔よりも強いです。

     

     

    就活ルール廃止による影響

    そのような現状で、就活ルールの廃止が提言されたことには大きなインパクトがあります。

     

    イノベーションを生み出せる人が求められる

    経済同友会は過去に、「社会人経験のない学生を大量採用し、均質なマインドセットを行うことが、画一的な人材を生み出し、イノベーション創出を阻害している可能性がある」という見解を示しています。

    この言葉のとおり、新卒一括採用とは、就職というゴールに向けて励んできた学生を同じタイミングで採用し、同時に社員教育を行うというシステムなので、画一的な人材を生み出すという懸念は的を射た指摘といえそうです。

     

    昔はそれでも、会社のために一生懸命に働く社員が重要な戦力でしたが、グローバル競争が激化する現在は、会社のために尽くすというだけでなく、イノベーションを生み出して他の企業と差をつけるような社員が求められているのです。

     

    IT関係と英語のスキルを持った学生が重宝される

    具体的には、留学経験やIT関係のスキルを持った学生が今まで以上に重宝されるようになるでしょう。中国やインドなど、ここ最近で急激な経済成長を遂げている国では、優秀なエンジニアなどの技術者が多く育成されています。世界経済の一翼を担う日本の会社員には、将来的にこれらの国々の技術者と一緒にビジネスを行うためのスキルが欠かせません。

     

    その最も重要なスキルが、英語力なのです。最近は大学の授業などでもグローバル人材の育成を意識した取り組みが活発ですが、留学経験を経て生きた英語力を身につけた学生は、海外の優秀な技術者のもとで働く貴重な人材となります。また、IT関係の知識を持つ理系の学生も、次世代のイノベーションを生み出す人材として強く期待されています。

    就活ルールが廃止され、新卒一括採用が絶対的なルールでなくなれば、就職を見すえた学生時代の過ごし方も大きく変わってきます。留学などで海外経験を積むことも選択肢に入ってきますし、場合によっては単位を取得した後にすぐ卒業するのではなく、モラトリアム期間を設けて語学や技術関係の勉強に励むことが一般的になるかもしれません。

     

    少子化の時代なので、スキルを持っていなくても仕事を選ばなければ就職できる見込みはありますが、その場合は単純かつ賃金の低い労働現場に追いやられる可能性が高く、将来的な出世は見込めないでしょう。就活をめぐる学生間の競争も今より激しくなることが予想されます。

     

    影響を受けないために

    現在、就職活動をしている学生の皆さんは、自分の就職の時期に就活ルールの変化が重なって不安に感じているかもしれません。しかし、変化の時代に就職することは、新たな社会環境で活躍するチャンスでもあります。

     

    高度経済成長を生み出したイノベーションとは別の形のイノベーション人材が求められる現在、学生が自分を磨く手段は一つではありません。留学やインターンなど、新しい環境に身をおける機会には積極的に参加しましょう。

     

    また、就職しようと考えている会社の労働条件や雇用への考え方などの情報をキャッチしておくことも重要です。学生のうちから新たな時代を見すえて、自分が活躍するイメージを膨らませておきましょう。

     

     

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