目次 [非表示]
就活ルール廃止
2018年9月3日、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長より「選考採用に関する指針」の廃止、つまり就活ルールが廃止される発表がなされました。
就職活動中、あるいはこれから就職活動を行う予定の学生の皆さんにとっては、見逃せないニュースですね。
このニュースがどのような意味を持っているか分かりやすく一言で言うと、就職活動の時期を決めたルールが廃止されるよ、という事です。
そもそも「選考採用に関する指針」というものは就職活動における採用選考活動の解禁時期等を定めたガイドラインです。
2018年では毎年3月1日を翌年4月入社予定の新入社員向けに、会社説明会を解禁日とし、6月1日より面接を始めとした選考活動の解禁日と、このガイドライン上で定めていました。
しかし、これからそれを無くすよ、というのが今回の宣言の内容です。
就活ルール廃止の理由
では、何故ルールを急に無くすという宣言を経団連側は行ったのでしょうか?
理由としては一つ目に現在のルールが形骸化していて時代に合ってないという点があります。
そもそもこのルールは65年前に企業と大学が採用時期を定めたものが始まりです。
このルールにより学生の青田買いを防ぐ、また時期を明確に決める事で学生が就職活動に追われて学業に専念できなくなる事態を回避する、等と言った目的の下に定められたルールでした。
しかし、このルールはあくまで紳士協定であり、破っても特に罰則はありません。
また経団連に所属していない企業は対象外の為、昨今力を伸ばしているITベンチャー系や外資系企業に関してはルールが適用されません。
昨今は技術革新によって海外との壁はなくなりつつあり、企業にとっては人材獲得競争も相手が国内だけでなくて海外との企業を相手にしなければならない、そしてこの勢いはますます強くなることが予想されます。
こういった事から新卒一括採用が当たり前だった高度経済成長期のルールが合わなくなっていると判断をされたのでしょう。
学生の皆さんにとってはルール上では選考解禁日である6月1日に既に内定を得ている学生というのはそれほど珍しくないかと思いますが、それはこの就活ルールが形骸化していてあまり守られていないという事の表れです。
このルールを知っていて守っている真面目な学生側からするとルールを破って選考に参加している学生は理不尽だと思いますよね、そう言ったある意味本音と建て前のミスマッチを無くす為にも今回このような判断をされたのだと思います。
就活ルール廃止によるメリット
では就活ルールが無くなる事により何が起こるのか、学生側からのメリット、デメリットに分けて予測します。
情報を得る機会の増加
メリットの一つ目には情報量、または情報を得る機会の増加です。
就活の時期が撤廃された事により、企業がより長い時間学生に情報提供ができる機会を得た事になり、企業説明会やイベントが行われる機会がより長くなることが予測されます。
学生にとっては就活は情報戦と言っても過言ではなく、こういった機会を通じてターゲットにしている企業を分析し、自分の就活へ役に立てる事ができるでしょう。
選考に参加できるチャンスの増加
メリットの二つ目は選考に参加できるチャンスの増加です。
今までは選考は4年生の6月からと決まっていましたが、その為企業の選考が重なってしまって、志望する企業を絞らなければならなかったり、選考に参加したくても締め切りが過ぎてしまっていた、と言った事があり得ました。
しかし、多くの企業がルール撤廃により通年採用に切り替える事が予測されます。
これにより企業の採用活動の時期にばらつきが生まれ、締め切りが過ぎてあの企業の選考に参加できなかった、と言った事が少なくなるかもしれません。
留学生にとっては有利
メリットの三つ目は留学生にとっては従来よりも有利であるという点です。
大学時代を海外の大学で学んで、就職は日本でしようと考えている留学生にとっては、従来のルールの下では非常に短い時間の中で就職活動を行う必要があり、負担が大きかったと思われます。
しかし、就活ルールが撤廃されることによって、他の学生たちと同じように就職活動を行う事ができるようになるでしょう。
グローバルな人材を取りたい企業にとっても留学生を取れるチャンスが増える事はメリットだろうと思われます。
就活ルール廃止によるデメリット
一方デメリットもいくつか考えられます。
学生の疲弊
デメリットの一つ目は学生側が疲弊してしまうという点です。
通年採用が行われるという事で一年中就活関連のイベントや説明会が多く開かれる事が予測されますが、会場が遠かった場合交通費等もかかりますし、慣れないスーツや靴での移動に体力も消耗するでしょう。
また、情報があふれかえる事で混乱して、返って不安になってしまう事も考えられます。
今後就職活動に挑む学生の方はより一層情報の取捨選択、また自分の就職活動における軸を持つ事が重要になってくるだろうと思われます。
学生としての活動に時間が割けない
デメリットの二つ目としては学業、サークル等といった学生としての活動に割ける時間が減ってしまうという点です。
これから就活の時期が無くなるという事はより就職活動に割く時間が長期化することが予測され、それに合わせて就活の事を考えずに何かに打ち込む機会というものが減ってしまうと予測されます。
SPI等の筆記試験もあり、その対策も必要なのは周知の事実です。
そもそも就活ルールが設けられたのは学生の本文は学業なので、学業に集中させたいという思惑もあったようですので、ルールが撤廃されることで、ルールが設けられる前と同じような状態に戻る事は容易に予測できるでしょう。
日本型雇用の終焉
このような流れから見える事は就活が新卒一括採用ではなく、より中途採用に近い形になっていくという事です。
日本の採用の特色としては新卒一括採用によって取った人材を終身雇用して育てていくというものがありましたが、終身雇用神話が崩れて、今度は新卒一括採用神話が崩れ始めたという事がこのような流れから見えてきます。
つまり、日本型雇用が終焉を迎え始めているという事が考えられます。
これからは海外の企業とも肩を並べなければならない、あるいは政府が外国人労働者の受け入れを緩和する流れを見せているところからしても、労働者側も海外の労働者と同じ土俵で働かなければならない、あるいは選考に参加しなければならないといった状況になり、この流れは加速していく事が考えられます。
海外では日本のような採用は、むしろ特殊な部類に入ります。
日本型雇用終焉により、日本の雇用環境はより海外の標準へと近づくのではないかと考えられるでしょう。
一方海外の就職活動はどのようになっているのか、簡単に説明しますと在学中ではなく学校卒業後に就職活動を始めるのが普通です。
在学中にはインターンシップを行い、社会経験を積む、また会社が自分に合っているかを調べるといった活動をして、十分に自己分析をした上で卒業をし、その後就活という流れです。
学生としてできること
では学生としては何ができるのか、幸いにもすぐに環境が大幅に変わるという事は考えづらいかと思います。
政府は2018年10月29日、2021年春入社の学生を対象にした就活ルールについても従来通り面接の解禁は4年生の6月と現行のルールを踏襲する日程を維持しました。
22年以降入社についても学生を混乱させないように現行の日程を変えない認識を文書で示しています。
なので、すぐに面接が年中行われるといった状況にはならないものかと思います。
しかし、経団連の認識や、企業間の実情、また少子化による人手不足による人材獲得競争の流れから、日本の雇用環境は変わらざるを得ないところまで来ている事は事実だと思います。
政府の発表ではインターンについては特に定められていない為、インターンを通じた就職活動は就活の早期化の流れを後押しするかもしれません。
この流れは止まりそうにないので、学生の皆さんは悲観や不安視せずに、流れをよく見て就職活動に挑んでほしいと思います。